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胸の扉

第3章 お互いの距離


買い物を終え、ルナマリアはげっそりしてる。
どうやら気疲れしたようだ。

シンは心配そうに話しかけ、せっせと飲み物を運んだり、背中をさすったりしている。

アリアもアリアで気を使いすぎて疲れているようだ。

「疲れましたか?」

「あ、いいえ・・。初めてでしたから。私、あまり人とか変わったことがないんです。だからどうしていいかわからなくて。ごめんなさい。ルナマリアさんにも無理させてしまったようで。」

長い睫毛が悲しげに伏せられる。

美しいと思うと同時に、演技のような嘘を感じた。
あまりに現実感のない話だからだろうか。

人と関わったことがないなど、ありえない。

「王宮では一人で?」

イザークの声色から不信感が伝わってきた。
やはり今回もだめなのだろう。

心が冷えていくのを感じる。
しかし、イザークがそれほど単純に同情してくれる存在だとは思っていなかった。

それでも、信じてもらえる可能性を信じてしまってたのだ。

「はい・・。ずっと王宮にいましたから。両親が亡くなってから外に出るのが怖くて・・・。」

嘘と本当を練り混ぜながら言葉を紡ぐ。

「そうでしたか・・・。」

少しだけ納得したようだが、アリアは心を閉ざしてしまった。


その後昼に行こうとしたレストランに4人で入り、ぎこちない晩餐を過ごした。

うわべだけの綺麗な会話。
レストランから出る頃には皆げっそりとしていた。

「では、私たちは戻りますね。」

挨拶をするルナマリアの後ろで、やっと帰れると安堵の表情をシンは浮かべていた。

「帰りましょうか。」

ルナマリアとイザークが反対方向に歩いてく。
イザークの後について行こうとするとシンに呼び止められた。

「あの!今日はありがとうございました・・。よく生意気だって言われるんで、失礼あったらすみません。」

純粋な彼を見ていると心が暖かくなる。

「いいえ、こちらこそ。またお会いできるのを楽しみしてます。」

ふわりと微笑むと改めてイザークの後ろについていった。
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