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胸の扉

第3章 お互いの距離


15分ほどで準備ができたようだ。
思ったより早くて、ホッとする。

ワインレッドのタイトなワンピースに身に纏う。
丈はミモレ丈で、スカート部分がピッタリと体に沿ってはいるものの上品に見える。
胸元に少しだけ開きがあるがこれも下品さは感じさせない。

「うわぁぁ」

ルナマリアが小さく感嘆の声を上げる。

「お待たせいたしました、」

「いいえ、行きましょうか。」

さっとイザークが手を差し出す。
アリアはその手を取り玄関を出た。

見慣れない光景にシンとルナマリアはぽかんとする。
これが上流階級か・・・。

「あんたも今度のパーティーであれくらいしてよね。」

「え、やだよ、恥ずかしい・・・」

「じゃあ何?二人で仲良くおててでも繋いでる?」

「なんでだよ、別にそばにいればいいだろ?」

少し照れたように頭をかく。

「そうだけど・・。」

つられてルナマリアも赤くなる。

「おい、お前ら何してるんだ?」

玄関外の道からイザークが大きい声で呼ぶ。

「すみませーん!」

シンが元気よく返事をしてかけていく。


「すみません。」

「いいえ、でも・・・。さっきの方があなたらしいと感じますわ。随分私の前だから気をつけているのでしょう?」

くすくすと笑う姿がどこか幼く見える。
ちらりと下から見上げられれば、大きく胸が弾むのがわかる。
この頃、もうイザークは彼女のことを意識し始めていた。
本当は初めて会った時から一目惚れしていることを知っているのだ。

しかし、それを認めたくない思いがどこかにあるのだ。

「いや、しかし・・・。」

ねっ?と下から首を傾げられたら、効果は抜群だ。

こめかみを押さえ、はぁーっと大きなため息をつく。

「わかりました・・・。」

ちらりと彼女の方を見ると、楽しそうに微笑んでいた。

「行きましょう。」

顔が赤いのを認識されないうちに、手を少し強引に引いて歩き出す。

「あっ、」

ピンヒールで、いきなり引っ張られたためついよろけてしまう。

転びはしなさそうだが、足はくじくだろうと覚悟した。

しかし、優しく肩を抱き寄せられ、体制を崩すことはなかった。

「すみません、いきなり引っ張ってしまって。」

「いいえ・・・・。私がぼーっとしていたせいですから。」

イザークの顔が近くつい頬を染めてしまう。
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