第21章 熱の在処
大事な事を二度言う辺り、もはや心も頭も大パニック状態である。第一弾と同じく相手は光秀であり、何だか自分もまんざらではなさそうな感じだったのが更に凪を追い詰めた。
(しかも…今回自分から舌入れてなかった!!?何なの私、やっぱり欲求不満!?お世話になってる人に不謹慎過ぎでしょ…!)
まったく翻弄されっぱなしであった第一弾とは異なり、第二弾では主に自分の積極性が増している。しかも何か色々言っていた。万が一寝言で口にしていたら、恐ろしいレベルの事を言っていた自覚が明確にある凪は、先程から延々とばくばく音を立てている心臓を持て余し、褥に転げ回りたい衝動をぐっと堪える。
(どうしよう、無理。色々思い出したら光秀さんの顔まともに見れない……無理!!)
声にならない叫びを胸中で漏らす凪を他所に、もういい加減いいだろうと声もかけず襖を開いた光秀は、褥で丸まって転がる凪の姿を目にし、微かに眼を見開く。
「……仔犬のように丸まって何をしている。まさか本当に転んだ訳ではないだろう?」
「…こ、転んでません。今はちょっと、自分の中の不埒な内なる自分と戦ってて…」
「……ほう。それで、内なるお前とやらは打ち倒せそうか」
「なかなか手強いです」
凪の言っている意味はそれなりに意味不明であったが、光秀の視界へ真っ赤に上気した首筋や耳朶が映った事で、少なくとも彼女が何と戦いを繰り広げているかは大まか察しがついた。くつくつと喉奥で笑いを溢し、胸前で緩く腕を組みながら首を軽く傾げる。苦々しく呟く凪は相変わらず丸まったままであり、本当に悪戯がばれて身を縮める仔犬のようだ。
「それ程手強いなら、助太刀してやる事もやぶさかではないぞ」
「だ、大丈夫です……あの、光秀さん…ひとつ訊きたい事があるんですけど」
「言ってみろ」
冗談めかして告げれば、凪は転がったままで軽く首を左右へ振る。内なる自分との決着は自分自身でつけたいらしい。そんな中、とてつもなく訊きにくそうに彼女が切り出して来た。その口振りに何事かを勘付いたらしい光秀が静かに促せば、凪は実に遠慮がちに問いを投げる。
「……私、夜中に変な寝言言ってませんでした?」
「…………………」