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❁✿✾ 落 花 流 水 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第21章 熱の在処



普段は涼やかで冷静な男の、金色の双眼が熱を孕んで揺らめいていた。その視線を受け、何も言えなくなってしまった凪の無防備な唇へ光秀がそっと自らのそれを重ねる。奪うようなものではなく、優しく秘めた激情を少しずつ注ぐかの如く、幾度か角度を変えて啄まれる口付けを、凪は拒む事が出来ない。薄く開いた唇の隙間、そこからそっと差し入れた舌先が上顎をくすぐった。舌が入り込んで来た感覚にひくりと跳ねた身体を宥めるかのように指先で耳朶に触れ、再び大きな手が彼女の頭を支える。

「ん…、っ、ん…ぅ…」

凪の吐息混じりな声に瞼を伏せ、奥に逃げてしまっていた彼女の舌を誘い出した。尖らせた先で柔らかな表面を軽く突つき、震える舌がぴくりと跳ねた瞬間、絡め取る。唾液が絡む水音が口内から響き、その音が届く度に凪は羞恥に耐えられず、硬く閉ざしたままの瞼を震わせた。次第に潤う互いの口内で、ちゅうとわざと音を立てながら凪の舌を吸った瞬間、行き場の無い彼女の手が光秀の着流しをぎゅっと掴む。

「…ふ、ぁ……っ、」

鼻にかかるか細い音が愛らしい。わざと唇を一度離し、もう一度角度を変えて舌を絡め取った光秀のそれが、舌の裏側をくすぐりながら誘って来た。最初の勢い紛れの口付けならばともかく、今の凪にその余裕はない。ぎこちなく絡められ、隙が出来れば逃げる舌はしかし、動きを読まれたような男の暖かく湿った舌によって結局捕まってしまう。

「…っ、ん、ぅ…、みつ、ひ、でさ…っ」

くちゅくちゅと唾液から発せられる水音に凪の意識がくらくらと回った。光秀から与えられる、甘くて優しい口付けの感覚は彼女の身体から確実に力を奪って行き、抵抗すら失くさせるかの如く甘美である。酒の所為か、あるいは湯浴みから戻って来た頃から延々と燻っていた熱の所為か、もしくは光秀自身から注がれるものの所為か。身体中がとにかく火照ったような感覚に、吐息を溢した。

合間で名を呼ばれ、舌の表面を優しく愛撫した後、唾液をちゅっ、と吸ってから呼吸を解放する。以前路地裏で交わした口付けとは違い、呼吸ごと呑み込んでしまうような激しいものではない為、凪の息が完全に乱れるといった事はなかったが、改めて見下ろした彼女の頬は朱に火照っていた。

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