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❁✿✾ 落 花 流 水 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第20章 響箭の軍配 参



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─────後方の陣内、凪と光忠。

光忠により凪の天幕周辺が人払いされた後、机上の地図を見ながら光忠は光秀が示した南蛮筒部隊の方角を指すべく慎重に計算をしていた。太陽が出ていればある程度の計算は可能だろうが、生憎と未だ曇天が広がっている。自主的に【見る】方がどの程度の負担がかかるのか予想出来ない以上、大雑把な事はしたくない。しばし地図を睨んでいた光忠は、一度凪を残して天幕の外へ出た。すると、先程まで霧雨が降っていた辺りが、すっかり止んでいる事に気付く。
光忠を追い掛けるようにして天幕の外へ出た凪も、雨が晴れている事に気付くと眼を見開いた。自分が予め【見た】景色では既に雨は上がっており、晴れ間が見えて光も射している。つまり、これからどれだけの時間かは分からないが、その内目的の部隊は出発をするという事だろう。

「あ、ちょっと晴れて来ましたね」
「そのようだな。久し振りの晴れ間といったところか」

小国にやって来てからは天候が思わしくなく、昨日今日と連日すっきりしない天気が続いていた為、分厚い雲の奥に広がる青空が見えると何処となく安心する。凪の発言へ同意しつつ、早速雲間から覗く太陽の姿を捉えた男が方角をはかり、やがて天幕へ戻った。
光忠に続いて天幕内へ戻った凪は、机上の前にある床几へ腰掛け、光忠の応えを待つ。やがて、程なくして一点の方向を指した彼は、凪を横目で見た。

「こちらの方角だろう。細かくはさすがに分からんが、おおよそは合っている筈だ」
「おおよそでも十分ですよ。じゃあ早速やってみますね。見張り、お願いします」
「案ずるな。お前の身は私が責任を持って預かる」

小さく笑った凪に対し、憮然とした表情ながらもしっかりと頷いた光忠は、幾分案じた様子で唇を引き結ぶ。一度呼吸を整え、瞼を伏せた凪は実に十数年ぶりとなる自主的な【目】の発動に緊張を過ぎらせ、身体の力をそっと弛緩させた。

(地図的には凄く遠そうだけど、縮尺が分からないからなあ…近場からちょっとずつ…)

目元に神経を集中させ、そっと瞼を持ち上げる。じんわりと広がる熱と共に、凪の眸の光彩がゆっくりと漆黒から深い青色へと変わっていった。

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