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❁✿✾ 落 花 流 水 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第20章 響箭の軍配 参



「以前、君は私に夢中になれるものを探せ、と言っただろう?だから今、探している途中なんだ」
「確かに言いましたけど…それが私とどういう関係が…────」
「ひとつは、私の興味が君に残っているか。だけどこれは愚問だった。君はまだ、私の興味の中心に居る。策を巡らせている間も、君に会えると思うと心が弾んだよ。だから、きっとまだ私は君にちゃんと興味がある」

この男は、人を人と思っていない。自分の興味が何処に向かっているかなど、いちいち確かめる事をせずとも分かる筈だ。
心の機微を知らない物言いに、凪の唇が微かにわなないた。

「ふたつめは、興味がある事を前提として、君のどんな姿に一番興味が惹かれるか。笑った顔か泣いた顔か、あるいは怒った顔か…感情には様々な種類があるけど、その中で私が一番心震えるものが何かを知りたかった」
「なに、それ…」

三日月の形を刻み続ける清秀を前に、凪は信じがたいものを見るかのような眼差しを向け、掠れた短い声を発する。
やがて、ぐっと一度唇を噛み締めた後、彼女は目の前の男に向かって沸々と湧き上がる苛立ちを露わにした。

「そんな下らない事の為に、あの人達に酷い事したんですか!?色んな感情を見たいなんて、そんなの無理です。貴方には怒りしか向けられません…!笑うなんて、もっての他ですよ!」
「毒を盛った事が酷い事?…それじゃあ、君にこうして会う為だけに、この小国に謀反を焚き付け、戦を引き起こしたって言ったら、どうする?悪鬼の所業とでも、罵るのかな」
「……え?」

およそ信じがたい言葉を何の感情もなく言ってのけた清秀は、小さく肩を揺らして喉の奥で低く笑いを溢し、眇めた眼差しで凪を射抜いた。形の良い口元には酷薄な笑みが浮かび、呆然と小さな音を零す凪を見つめて居る。
男の眸は、実に愉しげだった。

「……少し軽いけど絶望も、悪くないね」

落とされたその一言が、凪の中に湧き上がる怒りを苛烈なまでに燃え上がらせる。

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