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❁✿✾ 落 花 流 水 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第20章 響箭の軍配 参



─────────────…

─────小国との戦二日目。

昨夜から降り続いていた雨の勢いが収まった事から、辰の刻(8時)頃より既に二日目の開戦となっていた。
雨脚こそ弱まっていたものの、未だ鈍色の雲が空を覆い尽くし、朝だというのにすっきりとしない薄暗さがまとわりついている。しとしとと降る霧雨は細やかな粒となって顔や髪を濡らし、山中という事もあって霧のようなものを発生させていた。

信長の本隊は相変わらず平原で小国軍とぶつかっており、膠着状態が続いている。というのも、光秀の策の関係により、全力で叩き潰す事が出来ないというのが主な原因と言えよう。
力の半分程も出し切る事なく、一進一退を繰り返していた平原での戦いだが、先日より遥かに手応えのなくなった相手軍を見て、腑抜けが、と信長が一笑したのは言うまでもない事だった。

光秀率いる部隊は、天候の関係で火縄銃を持ち出す事が出来ない事もあり、一部の兵達は白兵戦を繰り広げている信長本隊への応援として駆け付けている形だ。半分に分けた残りの兵を率いた光秀は、一部を斥候として敵陣へ飛ばし、少ない兵数で山中へ待機しつつ、機を窺っている。
今回の戦において、光秀が重要視しているのは単に勝敗だけではない。敢えて信長に囮のような真似をさせ、本隊で手ぬるく戦って貰っているのには、とある目的があるからだ。

一つは中川清秀の動向と凪との接触の有無。
そして、もうひとつは…─────。

いつもの銃を腰に下げていない、帯刀だけに留めた光秀はただじっと戦況を見下ろしつつ、目的のものを待つ為、金色の双眸を鋭く眇めたのだった。



中傷、及び重傷者以外は出陣して陣を出ている為、後方には現在、医療部隊と兵站部(へいたんぶ)に所属している足軽達だけが残されていた。
おそらく本日で決着がつく。出陣前にそう兵達へ伝えていた光秀の言葉に鼓舞された者達は、一様に戦場へ立つべく出て行ってしまった為、陣内は昨日などと打って変わり、大層静かなものになって居る。
夜半に補給から戻った家康は現在、光秀から頼まれた何事かの用事の為、兵站部に所属する一部の兵と共に天幕内で何やら打ち合わせをしているようだ。

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