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❁✿✾ 落 花 流 水 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第17章 月に叢雲、花に風



(何!?光秀さんがちょっと幼くなって長髪ポニテになった感じの人なんだけど…!?え、顔似すぎじゃない!?兄弟!!?)

内心で激しく捲し立てながら面持ちを凍りつかせた凪を前に、光秀激似の長髪ポニテ男────もとい、明智光忠は目の前で固まっている凪を見つめ、しばらく虚を衝かれた様子で菫色の双眸を瞬かせていたが、やがて口元へゆったりと弧を描いた。

「なるほど」

(何が!?)

その男の笑顔は、光秀が良からぬ事を考えている時の些か悪どい笑みに酷似している。短く紡がれた音へ凪が小さく肩を跳ねさせた様を見て、男は後ろ手に襖を閉め切った。

「光秀様はご不在でしたか。これは失礼致しました。私は明智光忠、光秀様とは恐れ多くも従兄弟といった間柄になります」
「い、従兄弟さんでしたか…こちらこそ初めまして、凪と申します」

折り目正しく、しかし膝を折らず慇懃に挨拶を紡いだ男は、所作と声色、口調だけは実に丁寧であるが、この時代の所作などいまいち分からない凪はさして気にする事もない。縁側へ向けていた身体を男の方へ向け、正座の体勢のまま自らも名乗り、挨拶をする。従兄弟と言われればここまで顔立ちが似通っている事も納得だ。凪が最初に警戒を見せられなかったのは、光忠の顔立ちがあまりに光秀に似過ぎていた所為だった。

一方、名を名乗った凪に対し、光忠は眸を僅かに瞠る。まあ光秀の自室に居る時点でおおよその察しはついていたが、確信を得たとばかりに切れ長の眼を眇めた。

「貴女が凪様…左様で。織田家ゆかりの秘姫と聞き及んでおりますが、信長公とはあまり似ておられないのですね?」
「え!?まあ…信長様とは遠縁、ですから」
「なるほど、遠縁…ならばそういう事もございましょう」

今までは織田家ゆかりの姫、と言うだけで誰もが簡単にあっさり納得してくれている。それだけ信長の力が強い事の現れなのだろうと思っていたが、まさかそのように切り替えされるとは。考えた末に導き出した返答を耳に、光忠は腹の底が読めない笑みのままで頷いてみせただけだった。

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