• テキストサイズ

❁✿✾ 落 花 流 水 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第17章 月に叢雲、花に風



そんな凪は現在、薬学の勉強の合間に光秀の部屋の縁側で休憩をしていた。本日は登城の予定がなく、一人で文字の練習や情勢の復習を行い、つい先刻までは薬学を行っていたという訳である。
家主である光秀は現在、少し借り入れたい書物があるという事で、三成の元へ向かっていた。凪もついて来るかと言われたが、急用の中で凪までついて行ってしまうと、光秀が自分の歩調に合わせなければいけなくなると思い、部屋で勉強している旨を伝え、断ったのである。
日がいっそう長くなった事もあり、なかなか判別は難しいが、大体今は暮六つ(18時)に近い頃だろう。空は相変わらず比較的明るいままだが、半刻後くらいには次第に暗くなって来る。
開け放った縁側でぼんやりと庭先を眺めていた凪は、本能寺の一件から怒涛のように過ぎていった時間を思い、思案に耽った。

(もうすぐ乱世に来て一ヶ月になるんだなあ。最初にした摂津の旅がめちゃくちゃ過去に思える…)

それもその筈、摂津から戻った後も割と激動であったが、ここ二週間もなかなかにハードスケジュールだった。しかし、学ぶ事が今は純粋に楽しく、治療も慣れて来た事もあって凪なりのやりがいを覚えていた。いざという時、役に立てるよう、足を引っ張らないよう、と始めた応急手当も医療兵達の助けや家康の助言や指示により、だいぶ様になったような気がする。
光秀の家臣達は勿論の事、訓練に同行している事もあって医療兵や訓練兵達の中での顔見知りも多くなって来た。今では演習場で声をかけて来てくれる者も多い。その度、合間に八瀬や五郎が入ってくるのはいまだに謎だが、まあ何とか上手くやっている。
御殿での生活も少しだけ変化した。九兵衛に頼み、時間がある時は厨(くりや)を手伝わせて貰っていて、光秀の朝餉や夕餉など、一日の内に一食は凪が作る事が少しずつ増えて来ている。その甲斐もあり、今では厨の勝手がだいぶ理解出来るようになって来たのだった。

(光秀さん、そろそろ帰って来るかな。厨番の人には、最近忙しそうだから、たまにはお休みしてくださいって言われちゃったし…)

/ 903ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp