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❁✿✾ 落 花 流 水 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第17章 月に叢雲、花に風



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結局その日の薬名漢字読み書き指南は四つ(22時)頃まで続き、そのまま家賃へ突入する形で終了の運びとなった。

翌日、家康によって開かれた薬学指南は前夜に行った漢字指南の甲斐もあり、ある程度の薬名における字体を覚えた凪は、元々持っていた知識でそれなりの成果を上げる事が出来たのである。調合の仕方、調合用の道具の使い方など、薬学の基礎から応用までを教わった。
更にその日の午後には時間を空けたという光秀による情勢指南が入り、生易しくない、の言葉通りかなりの量の知識を詰め込む形になった凪は、薬学とは違ってついて行くのがやっとではあったが、光秀の指導が丁寧である事、何度も躓いた箇所は教えてくれる事などのお陰で、無知であった頃とは見違える程の知識───とまではいかないが、最低限の知識を詰め込む事が出来るようになったのである。

そうしてしばらく、光秀について登城する日は家康に薬学を習い、時折先日のような訓練へ医療部隊と共に同行して怪我の治療法などを覚え、時間がある時には光秀による情勢指南と漢字の練習を合間に挟みながら、かれこれ二週間の時が一気に過ぎていった。
その合間で試しに実際調薬したり、治療を一部一人で任されるようになったり、と期間中に知識や技術を会得していった事もあって、当初よりもかなり成長した凪の件は、家康により信長や秀吉にも伝えられており、以前家康が提案した、調薬師の件についても本格的に動き出し始め、凪の無職脱出の為の様々な試みは思った以上に順調に進んでいた。

そんな戦国ライフ二十八日目の事─────。

初夏から本格的な夏へ移り変わり始めた事もあり、光秀の御殿内も障子や窓を閉め切っていると、蒸し暑さを感じ始める。
凪の自室は縁側へ出るような大きな障子はない為、ここ最近は日中特に、入り口となる部屋の襖を、縁側の方だけ全開にする形で過ごしていた。光秀にいっそ全部開けてはどうかと言われたが、それだと文机に向かっている光秀と完全に向かい合わせで顔を合わせる事になる為、真夏の時期までは何とか耐えようという算段である。襖と窓を開けていれば、それなりに風も入り込んで来る為、まだ暑さも凌げるというものだ。

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