• テキストサイズ

❁✿✾ 落 花 流 水 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第16章 掃き溜めに鶴


衝撃に震え、彼はがっくりと肩を落とした。そんな同期の姿を些か哀れんだ眼差しで見やり、浅次郎はそっと苦笑する。

「まあ元気出せよ、お前も本気で凪様といい仲になれるとは思ってなかっただろ?それに変な男に掻っ攫われるより、相手があの光秀様ならいいじゃないか」
「た、確かに…」

八瀬にとって光秀もまた憧れの存在であり、あんな風に優雅で格好も良くて頭も切れて銃の名手で、とにかくいい男の要素をあれだけ詰め込んだ人はそう居ない。浅次郎の言う通り、訳の分からない変な男に持って行かれるくらいなら、いっそ憧れの光秀がその相手だと言う方が納得も出来る。何より光秀と凪が恋仲になれば、自分はどちらにせよ凪の傍に居られるのだ。単純で短絡的な思考、と光秀自身に称されているだけあり、八瀬の思考は恐ろしくポジティブだった。

「俺、どんな事があっても凪様をお守りし続ける…!」
「おーその意気だ。切り替えが早いって得だな。お前の長所だよ本当」

褒められているのか貶されているのか、いまいち判断の付き難い浅次郎の相槌だが、八瀬はあくまでも良い方向に受け取る。何故なら彼は基本的に超前向き人間なのだ。
想いをそっと抱いたまま、彼女を守ると決意を新たに意気込んだ八瀬の背後からそっと近付く気配を感じ、浅次郎は軽く片眉を持ち上げる。

「おう、男なら惚れた女と主君の為に命ぐらい賭けねえとな。それにしても、あの姫様に惚れるたあなかなか見所があるじゃねえか。おら、これで顔でも拭きな」
「ぐは…っ!!」

やって来たのは屈強な医療兵───五郎であった。八瀬に対し気概があると褒めた彼は労いか、あるいは多少の慰めの為だったのか、固く絞った手拭いを八瀬に向かってぶん投げる。
それがタイミングよく振り返った八瀬の顔面に当たり、鈍い悲鳴と共に後方へ尻もちをついた様を見て、浅次郎はそっと苦笑を溢し、五郎へ一礼したのだった。

(………馬鹿)

そんなやり取りをしていた八瀬達を視界に端に捉え、呆れたような溜息を小さく溢した家康は医療部隊の積み込みや撤退準備が完了したのを確認し、自身の馬を繋いだ場所へ向かう。

/ 903ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp