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❁✿✾ 落 花 流 水 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第15章 躓く石も縁の端



安土へ戻ってからも色々歩き回りはしたが、外を歩く際はいつも光秀が一緒であり、そもそも彼は凪へ歩調を合わせている為、足にはそこまで負担がかかっていなかったのだろう。

(こんな時に痛むとか、それどころじゃないのに)

慌てて片足へ向けていた顔を上げると、往来に溢れ始めた人混みの中、家康の背が少し離れたところに見えた。さすがにこれ以上離れたら迷子になってしまうと焦燥し、家康の名を呼ぼうと口を開きかけた瞬間、通りすがった一人の青年がふらりと体勢を崩して凪の方へ軽くぶつかって来る。

「わっ!?」
「…っ!」

背に大きな風呂敷を背負っていた彼は凪へ寄りかかる形でぐらりと身体を傾けた。反射的に支えようと両腕を伸ばして青年の上半身を押さえるも、背負っている荷物の重みも相まって青年に押し掛かられる形で彼女は地面へ尻もちをつく。

(痛…っ)

地面へ手をついた瞬間、ずきりと痛んだ左手首に内心で声を上げれば、次いでがしゃん、と鈍い音が響いて周りが不思議そうな面持ちを浮かべて振り返った。倒れた衝撃で青年が背負っていた風呂敷が地面へ落下し、包まれていた一部の荷が散らばる。その音を耳にし、我に返った青年が慌てて凪へ寄りかかっていた体勢から身を起こした。

「す、すみませんお嬢さん!お怪我はありませんか…!?」

凪へ向き直り、焦燥を滲ませ青年は心底申し訳無さそうな面持ちですぐさま頭を下げた。彼の顔色は若干青く、唇の色がほんのり紫色をしていたのを見咎めた凪は首を振って相手を見つめる。

「いえ、私は全然大丈夫です。こっちこそごめんなさい…!あの…もしかして具合、悪いんですか?」
「昔からなので、どうぞお気になさらず…それより、どこか痛めて…」

自身も不注意であったと反省し、謝罪を紡ぐと凪は心配そうに青年の顔を覗き込んだ。凪の視線を感じ、おずおずと下げていた頭を持ち上げた彼が苦笑混じりに告げ、彼女の状態を確認しようとした刹那、覗き込んで来るその顔を見つめて僅かに顔を赤らめる。一度不自然に切れた言葉へ首を傾げてみせれば、青年は取り繕った様を見せつつ視線を外した。

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