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❁✿✾ 落 花 流 水 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第15章 躓く石も縁の端



「言い忘れていたが」
「……?」

一度言葉を切った光秀を、凪が不思議そうに見上げたまま首を傾げた。肩から零れた黒髪が流れる様へ視線を向け、最初に羽織らせた自らの羽織りへ目線を流した後、そっと口元の弧を深める。

「俺が居なくて寂しいなら、家康の元へその羽織りを持って行っても構わないぞ」
「な……っ!!?」

意地悪く告げた瞬間、意味を察した凪の耳朶が真っ赤に染まり、短い音を発して絶句した。ふるふると羞恥で震える彼女の文句が飛んで来る前に瞼を伏せて吐息だけの笑いを溢し、再び金色の眼を凪へ向けて囁き落とす。

「行ってくる」
「…光秀さんの馬鹿…!そんな事絶対しませんから…っ」

からかわれた事への苛立ちと羞恥が綯い交ぜになった凪の、拗ねているのか怒っているのか判断が付きにくい声を背に受けつつ、光秀は後ろ手に襖を閉め切り、くつりと再度笑いを落とした後で室内を後にしたのだった。

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