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❁✿✾ 落 花 流 水 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第14章 紫電一閃



とはいえ、光秀としては自分が共に居る以上、何を求めようとも凪へ勘定をさせる気など更々無かった。不自由はさせないと告げたそれに二言などある筈がない。

「焼き物屋なら良く九兵衛が買い付けている店がある。そこで構わないか?」
「大丈夫です。この通り沿いなんですか?」
「いや、ひとつ奥の通りだ」

何故焼き物屋なのかはさておき、凪が寄りたいと言うならばそれを断る理由はなかった。御殿における食器類の買い付けや手配は基本的に九兵衛が行っているが、光秀も何度かその店へは足を運んだ事がある。馴染みの店の方が揃えも良いだろうと考え、その場所へ案内するよう凪の手を軽く引いた。

大通りから一本横へ逸れた通りは、少しばかり喧騒や人通りも落ち着いており、ゆっくり品選びも出来るだろうとの配慮も兼ねられている。
焼き物屋までは然程距離もない為、他愛ない話を交わし合いながら歩いている最中、突如後方で何事か荒々しい音とばしゃりと何かが溢れるような音が響き、二人は同時に背後を振り返った。
同じくして、光秀が即座に凪を自らの背後へ隠すよう腕を引き、険のある視線で辺りを見回す。物音に驚く人々が足を止めて意識を向ける中、騒ぎの中心に居たのは二人の男と、年の頃六つくらいであろう簡素な身なりの少年だ。

「この餓鬼!何処見て歩いてやがる…!!」

荒々しい怒声が響き、通りを歩く野次馬達はその剣幕と、男の腰に差された刀の存在を目の当たりにして身を竦ませる。少年の手には平たい桶が握られており、地面には桶の中に入っていたのだろう水と、小さな川魚と思わしきそれが二匹、土埃にまみれた姿で転がっていた。

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