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❁✿✾ 落 花 流 水 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第13章 再宴



少しばかりふわふわとした足取りの凪に歩幅を合わせ、光秀は顔を隣へ向けた。

「……凪、やはり酔っているな?」
「酔ってません。意識だってこんなにはっきりしてるじゃないですか。全然酔ってません」
「その割に手が童(わっぱ)のように熱いぞ」
「光秀さんは冷たいです」

確かに受け答えはしっかりされているようではあるが、返して来る言葉が些か普段よりも幼さを帯びている気がする。真っ直ぐに歩いているつもりだろうが、時折とん、と軽く肩がぶつかり、ふわりと離れて行く為、凪が転ばぬよう光秀は繋いだ手を軽く引いて自らの方へ優しく引き寄せた。

「………私、そんな軽そうな女に見えるのかな」
「…ん?」

唐突に切り替わった話題はあまりにも突拍子がなく、俯きがちなままでぽつりと落とされた言葉に、光秀は静かな相槌を打つ。言葉の真意は問わずとも、凪がそもそもやけ酒するきっかけとなった件を思えば推測するのは容易い。
肯定も否定もせず、ひとまず彼女の内心を吐き出させた方が幾分すっきりするだろうと、光秀はただ静かに促した。

「何故そう思った」
「何度も軽々しくキスされるから」
「…【きす】?」
「口付けの事です」

後の世では口付けの事をそう呼称するのか。内心で疑問を解消した光秀を他所に、凪は視線を足元へ投げたまま眉根を寄せ、何とも言えない複雑な表情で溜息を漏らす。

「亡霊さんといい信長様…は端っこだけど、政宗といい…なんかこう…遊びやすそうだから、軽くしてくるのかなって思ったんです」

別に清秀も政宗も、信長は半分は戯れであろうが、凪を軽んじて口付けた訳ではないだろう。それは好奇心や興味の類いを過分に含んでいるだろうが、凪に関心があってやった事だ。だが、それを己の口から告げるのは癪であった。
凪自身に自らを軽い存在、と認識して欲しいわけではまったくなかったが、既に彼女へ触れた男達の肩を持つ行為を、光秀が良しとする筈がない。

「……確かに、些か無防備である事は否定出来ないな」
「それ、昨日も廊下で言ってましたね」

───男を甘く見ている無防備なお前に、危機感というものを教えてやっているだけだ。

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