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❁✿✾ 落 花 流 水 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第13章 再宴



「…へえ」

緩やかに笑んだ口元から、自然と関心の滲んだ声が出た。
片手を伸ばして白く柔らかな頬へ触れ、自ら顔を寄せた政宗が凪の大きな眸を覗き込む。

「お前、そうやって笑ってると可愛いな」
「……え?」

囁くような音へ甘さが混じったそれを間近で伝えられ、凪が一瞬固まった。見開いた黒々した眸には政宗の端正な顔が映っており、一拍置いて言葉の意味を察した彼女は、あまりにも真っ直ぐ過ぎる発言にじわじわ湧き上がる羞恥を感じ、目元を淡く染める。

「…お、今度は紅くなった。そういうとこも可愛い」
「か、からかわないでください…!」

目の前でころころ変わって行く表情が面白く、つい揶揄混じりに追い打ちをかけると、次第に凪の眉根が顰められていく。遊ばれているという自覚はあったのだろう、怒ったような声色で言い切る彼女など意に介さず、凪の手から政宗が箸をするりと抜き取った。

「まあそう怒るなって。確かにからかってはいるが、言った事は全部本心だ。ほら」
「そうやって誤魔化し……んんっ!?」

喉奥でくつくつ笑った政宗が、取皿の上に乗ったままであった一口大の卵焼きを掴み、文句を言っている途中の口へ突っ込む。強制的に言葉を封じられた凪は、至極不服そうに憮然としたままで口内へ入り込んで来た卵焼きを味わった。

「美味いか?」
「………美味しいです」
「当然だな」

笑いながら問いかけられたそれへ、口の中のものを飲み込んだ後、律儀にも頷いた凪に対し、自信を隠しもしないまま言い切って彼女の頭をぽん、と撫ぜる。
空になった取皿を一度膳へ戻し、箸も政宗から受け取った後で同じように戻した後、中途半端のままであった盃へ手を伸ばした。くいっと一気に呷る姿に、政宗が意外そうな声を上げる。

「凪、お前結構いける口か?」
「そうでもないですよ。弱くもないし強くもないです」
「あまり一気に呑み過ぎるなよ。まだ飲むなら注いでやる」
「…あ、すみません」

酒の強さについて問われると、可も不可もない無難な答えが返って来た。元々凪は普段から呑む方ではないが、状況に合わせて普通に飲める。ペースが早すぎたり、変な呑み合わせさえしなければ相当早くに潰れるといった事はない。

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