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❁✿✾ 落 花 流 水 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第13章 再宴



笑いを含む光秀の指摘を不思議そうに聞いていた凪だったが、ちらりと視線が向けられた先が繋いだ状態の手である事に今更気付き、凪は慌てた様子でそれを離す。
手のひらのぬくもり、その名残を感じながら手を身体の後ろへ回しつつ隠した凪の耳朶がほんのり赤く染まった。

「良くないです…!てか、気付いてたなら早く言ってください」
「俺は別に気にしていないからな」
「そこは気にして下さいよ…っ」

しれっと言ってのける光秀の調子に合わせている内、特に声がけもせず男が襖を開け放つと、広間に居た武将達や信長の視線が真っ直ぐに飛んで来る。

(いきなり過ぎでしょ…!)

せめて一声かけてくれても、と思ったところで後の祭り。
しかし、反射的に身構えた凪を他所に、向かって来た武将達の視線は勿論、控えめに向けられる家臣達の視線もまた、昨夜とは打って変わったものとなっていた。
見定められるような、あるいは奇異なものを目にするような類いの視線ではなく、向かって来たものは全て暖かなものである。刺すような空気感しか知らなかった凪はそれへ純粋に驚き、身構えていた身体から少しずつ力を抜いていった。

凪の横顔を視線を流すだけで一瞥し、光秀は口元へ微笑を乗せる。
昨夜の一件ですべてが覆された。凪への認識や評価、信頼、それ等はある意味光秀が導いた結果ではあるが、元はすべて彼女の実力で勝ち得たものである。
自らの居場所を自分の特異な能力と、芯のぶれない真っ直ぐな心根で獲得した凪はもう、【他所からやって来た得体の知れない信長のお気に入り】ではない。

(信長様の御命を果敢にも二度救った、織田家ゆかりの姫だ)

笑みを乗せたまま瞼を伏せた光秀は、やがてそれを持ち上げると凪へ顔を向けた。武将達が集まる広間の席順を見ると、昨日とは異なっている。凪の膳が既に列の中へしっかりと配置されていた。

「どうやら今宵の席はあそこらしい」
「え?」

視線だけで促せば、家康の隣が空席となっている。光秀はいつもの信長に近い席である事が分かっていた為、特に何も言わずにいれば、一度小さく音を溢した凪が示された席へ視線を流した後、小さな声でそれを発した。

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