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❁✿✾ 落 花 流 水 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第13章 再宴



「光秀お前…!まさか旅先でも凪にこんな嫌がらせを延々と続けてたんじゃないだろうな!?」

(…あながち間違ってもいない…!)

先程までの穏やかな様とは一転、怒りに身を震わせる秀吉の様子を前にして、割とそうです、などと簡単に肯定は出来まい。
しかし当の本人である光秀は、慣れた事だとでも言わんばかりに秀吉の怒りを右側から受けると、視線を横へただ流すだけであった。

「さあな。これを嫌がらせと取るか否かは、凪次第だとは思わないか?」

口角を緩く持ち上げただけの男は、金色の眼を眇めて真意の見えない笑みを浮かべる。
揶揄の色が濃いその中に、ほんの僅かに見え隠れする別の感情を見つけたような気がしたのは、果たして秀吉の気の所為であろうか。
けれども、その空気感を裂くようにして思わず反射的に凪が言葉を発する。

「嫌がらせです」
「即答じゃねえか!本当にお前へ凪を預けても大丈夫なんだろうな!?」

残念ながら嫌がらせか否かで考えれば、やはり凪の中では嫌がらせ───意地悪といった認識である事に間違いはない。
間髪入れない即答振りに対し、段々と心配になって来た秀吉が改めて確認するよう問い詰めれば、光秀は面倒くさそうに瞼を伏せた後、やれやれと肩を竦めて相変わらず真意の読めない笑みを浮かべていた。

「凪の前では緩み切った顔をしていた割に、随分な変わりようだ。文句を言われる前に、大福をまるごとお前の口に突っ込んでおくべきだったな」
「逆にお前の口へまるごと突っ込んでやろうか。そうすりゃその減らず口も少しはましになるだろ」
「ま、まあまあ二人とも取り敢えず落ち着いてください…!」

このままでは第何ラウンドになるのか分からないが、新たな戦いの火蓋が切って落とされてしまいかねない。
咄嗟の事とはいえ、自分の失言も絡んでいる事から凪は二人を宥める方向で声を発した。
飄々とした光秀と、眉間に皺を深々と刻んだままの秀吉。二人の顔を見比べていたところ、光秀が思い立ったように凪へ顔を巡らせ、彼女を見つめた。

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