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❁✿✾ 落 花 流 水 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第13章 再宴



一度おもむろに瞼を伏せ、そっと吐息を溢した秀吉は眸を覗かせた後、片手をおもむろに持ち上げて自然な所作でくしゃりと凪の頭を撫ぜた。

「…!!」
「わかった、お前がそこまで言うなら俺も、もう何も言わない。……ただ、困った時は遠慮しないでいつでも相談しろよ?」

光秀の手のひらとは異なる、けれど同じ位に大きな手のひらが優しく頭を撫ぜる感触と暖かな温度に凪は一瞬面食らった様子でいたが、やがてじわじわと気恥ずかしくなって来たのか、困ったように眉尻を下げ、目の前の柔らかな笑顔からそっと視線を外しつつ小さく頷く。
子供扱いのような、あるいは歳の離れた兄妹のような、決して嫌味ではない包容力を感じさせる調子の手のひらを前に、どのようにすれば良いのか分からなくなったのだろう。ほんのり湧き上がる羞恥に凪の耳朶が薄っすらと淡く染まった。

「……分かりました。何かあったら、相談します」
「おう、そうしてくれると俺も嬉しい。…あ、そうだ凪。お前甘いものは好きか?」

凪の反応に満足したらしい秀吉は最後にぽん、と仕上げのように頭を再度撫でた後でそっと手を引く。
その妙な気恥ずかしさから逃れるよう、八瀬が先程持って来てくれた湯呑みを手にし、誤魔化すように口を付けていると、秀吉が思い出した様子で問いかけた。

「…え?好きです、けど」
「それを聞いて安心した」

両手で湯呑みを持ったまま、僅かに顔を上げた凪が双眸を瞬かせて肯定すると、秀吉は安堵した様子で傍らに置いていた包みを二人の間に置き、若草色の布を丁寧に取り去る。
布の中央には漆塗りの重箱が一段置かれていて、その側面や蓋部分には金や朱で見事な鳥と桜の絵が描かれていた。

「…きれい」

繊細且つ大胆なその絵につい目を奪われた凪が小さく呟くと、真っ直ぐに重箱の蓋へ視線を注いでいる彼女の興味が覗く眼差しを前に、秀吉は嬉しそうに双眸を僅かに眇める。
やがて蓋を静かに外せば、そこには各三列ずつ真っ白な大福が並んでいた。内側の漆の黒と大福の白がはっきりとした色合いを見せているそれを目にし、凪は重箱へ向けていた顔を秀吉へ向けた。

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