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❁✿✾ 落 花 流 水 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第12章 家賃



「……確かに、今の日ノ本にはこれらの品々を作り出す手段や技術、材料も存在しない。凪、貴様はまこと、五百年の時を越えこの乱世へやって来たという事か」
「…信じて、くれるんですか?」

納得した様子で告げられた信長の言葉に、驚いた様子で目を見開いた凪がぽつりと零す。
品を目にすれば信憑性が上がるだろうと確信はしていたが、南蛮から運ばれたのでは、と疑念を持たれる可能性も一部考えていた凪としては、信長の確信めいた物言いは意外だった。
見開かれた彼女の眼を前に、口角を持ち上げた信長は緩く腕組しながら文机の上に並べられた品々を一瞥し、最後に光秀へ視線を流す。

「これだけの品を見せられては、疑う余地もあるまい。光秀もそう確信した上で俺にこれらを見せたのだろう。…こやつは、そういう男だ」
「恐れ入ります。信長様のご慧眼には、ただただ敬服するばかりです」
「…ありがとうございます、信じてくださって」

二人の主従のやり取りを前に、緊張を解いた凪が安堵の笑みを浮かべた。幾分柔らかくなった凪を視界の端で捉えた光秀は瞼を伏せ、口元を微かに綻ばせる。
武将達全員に、といったわけにはいかないが、主君である信長がその事実を知る事により、凪は少なからず行動しやすくなるだろう。
仄かに緩んだ空気感の中、ふと信長はまるで時代を越えて来た事が問題なのではないといった様子で思案げに問いかけた。

「…それで貴様、【わーむほーる】とやらに巻き込まれ、この乱世へやって来たと言っていたが、それが引き起こされる原因に心当たりはないのか?」
「原因…ですか…」

ワームホールの説明をかなり覚束ないながらも説明したところ、驚きの理解力で意味を大まか把握したらしい信長に問われ、凪は顔を僅かに俯かせて思案する。
あの日の出来事を必死に思い起こし、ふと思い立った様子で顔を上げた。

「あの日は朝から雨が降っていて凄く暗い空模様だったんです。それで…確か、雷が落ちた気がしました。っていうか直撃したような気すらしたんですが、それでいつの間にか本能寺に…」
「……つまり、【わーむほーる】には己の意思の及ばぬ強制力があるという事か。ならば、突如として元いた時代へ戻される可能性も考えられる。そうだな?」

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