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❁✿✾ 落 花 流 水 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第11章 術計の宴 後



やれやれと瞼を伏せていかにもといった風の光秀に対し突っ込んだ凪は、そっと背後を振り返った。
そこには相変わらず上座に座している信長と、光秀の正面の席に座す秀吉の姿がある。信長は面白そうに笑っており、秀吉は仕方ないなと言わんばかりの苦笑を浮かべていた。

(穴があったら頭からすっぽり入りたい…!!)

内心で頭を抱えつつ恥ずかしさやら気まずさやらで小さく震えた凪を他所に、彼女へおもむろに近付く影があり、光秀の眉根が僅かに動く。

「へえ、初めて会った時から思ってたが、お前やっぱ面白いな。笑った顔も可愛いし、俄然興味が湧いた」

いつの間にやら席から立った政宗が凪の元へと近付いて軽く身を屈め、彼女の顔を覗き込むようにして笑う。ずい、と端正な面を寄せられた彼女がその分だけ身を引く様が面白かったのか、また一つ笑った政宗が緩く首を傾げた。

「それで?長旅の間、お前ら一体何があったんだよ。どう考えても出発前の距離感じゃないだろ」
「いや、まったく何もないです…!一緒に行動してたから、ただ光秀さんって人に慣れただけの事で…」

眇めた隻眼に好奇心を覗かせた男の問いを、無難な形で返した凪が慌てて首を左右へ振ってるのを尻目に、伸ばした片手で彼女の細腰を自らの方へ引き寄せた光秀が艶めいた流し目を送って来る。

「おやおや、あんなにも身を寄せ合い、町中を歩いた事を忘れてしまったとは、先程の事といい…酷い娘だ」
「もう黙ってください、話が拗れる…!」

引き寄せられた事にではなく、発言に対して文句を言っている凪は顔を上げて政宗の方から光秀へ意識を移した。むっと眉根を寄せている彼女の苛立ちを受けながらも、何処か満足げな光秀の眼が微かに綻ぶ。
目の前で繰り広げられている二人の光景を、隻眼を丸くしながら見ていた政宗は堪えきれないとばかりに笑い声を上げ、片手を凪の頭へ置き、ぽん、と軽く叩くようにして撫ぜた。

「分かった分かった。そんなムキになるなよ。もっとからかって遊びたくなるだろ」
「あまりそう遊んでやるな、政宗。その内噛み付かれるぞ」

冗談とも本気ともつかない調子で告げた政宗が手を離すと、凪から視線を流して光秀が男を映す。

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