• テキストサイズ

❁✿✾ 落 花 流 水 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第11章 術計の宴 後



「ああ、ここに出てる料理の味付けは大体俺がやったからな。で、どれから食ってみる?」
「え、」
「政宗様のお料理は皆さんにとても好評なので、凪様もきっとお気に召されるかと思いますよ」

とてつもなく自然に凪の前へ置かれた膳の箸を手にした政宗は、取皿を反対の手に持って問いかけた。
隣に座る三成の言葉もあり、曖昧に笑った凪の様子を一瞥してさっさと煮物を皿に盛った政宗は綺麗な箸使いで大根を一口大に切り、箸で持ち上げて凪の口元へ運ぶ。

(待って、拒否権がない…!)

「まあ食ってみろって。別に猫舌ってわけじゃないだろ?」

眼帯に隠されていない方の隻眼が何処となく愉しげに眇められた。まったく猫舌じゃない為、熱さは問題ないが、他の問題が山積みである。これはなんというか、ほぼ接点のない相手との距離感ではない。

「あ、あの…っ」
「ん?猫舌なら冷ましてやってもいいが」
「いや、結構です…!」

首を左右に振って猫舌疑惑を即座に否定し、いただきますと控えめに言うと、意を決した様子でつままれた大根を口に含む。
拒否権が無さそうな上、断り続けると逆に面倒な事になる気配を察知した凪だったが、頬張った大根はとてもよく味がしみていて柔らかさもちょうど良く、正直とても美味しかった。

「……美味しい」

緊張やら何やらであまり食欲はないのだが、この大根は文句なしである。ついぽつりと溢した小さな声を拾い上げ、政宗は嬉しそうに口角を上げた。

「だろ?ほら、箸」

目鼻立ちのはっきりとした端正な男が笑う。緊張している事を分かっていて、こうしてやって来てくれたのだろう政宗が持ち手を向けて箸を渡してくれるのを素直に受け取ると、続いて何品か取り分けた取皿も渡される。
隣では三成が幾分安堵を滲ませて微笑んでおり、気を遣わせてしまった事を申し訳なく思った凪は、せっかく取り分けてくれたのだからと再び煮物を小さく切って口へ運んだ。

/ 903ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp