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❁✿✾ 落 花 流 水 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第10章 術計の宴 前



静かに開いた音へ反射的に振り返った凪の視界へ映ったのは、布に包まれた荷を手にしたお千代だった。

「あ、お千代様。もう用事はお済みになったのですか?」
「ええ、凪様のお相手ご苦労様でした。…凪様、二人が何かご迷惑をおかけ致しませんでしたか?」

入室して来たお千代に問われ、凪はすぐさま首を左右へ振る。そうして笑みを浮かべると改めて二人へ視線を向けた。

「迷惑なんて全然!色々びっくりした事はあったけど、楽しかったよ。こんなに女の子と話したの、久々だったし」
「それは安心致しました。二人共、お下がりなさい」

凪の言葉を耳にし、柔らかな笑顔を浮かべたお千代は一つ頷いて見せるとそのまま、柳と楓に部屋を辞すよう命じる。
それを受けた姉妹はそれぞれ居住まいを正し、優雅な所作で畳へ指をついて深々と頭を下げた。

「それでは凪様、失礼致します」
「失礼致します。またお話させて頂けたら嬉しいです」
「こちらこそ、忙しいのに付き合ってくれて嬉しかったです。包帯もありがとうございました」

はにかんだ笑みを浮かべて姉妹へ凪が言葉を返せば、笑みを浮かべて無言の内に応え、静かに部屋を出て行った。
お千代と二人きりになった凪は、彼女が手にしている包みへ意識を向けると軽く首を傾げる。

「お千代さん、その包みは?」
「宴の席で凪様が袖を通される小袖にございます。わたくしが見繕わせていただいたのですが…良いでしょうか?お色の好みがございましたら替えもございますので、遠慮なくお申し付けくださいね」
「そんな事ないです。むしろ選んでくれてありがとうございました」

包みを軽く上げて見せたお千代は凪の傍で正座し、目の前でそれを開いた。淡い藤色の反物で作られたそれは、摂津での潜入を仄かに思い起こさせる。
選んでくれたものに対して文句を言うつもりなど端からない凪が笑みを浮かべて礼を紡ぐ。その様を目にし、一度瞼を閉ざしたお千代は改まった様子で幾分控えめな声量のまま言葉を発した。

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