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❁✿✾ 落 花 流 水 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第10章 術計の宴 前



一通りの簡易的な処置を終え、二人の女中──柳(やなぎ)と楓(かえで)が用意してくれた茶へ口をつけ、ようやくひと心地ついたところで凪は息をついた。
二人は年子の姉妹であり、年齢がそもそも近い事もあってか面持ちがとても似通っていて実に息が合っており、凪よりもおそらく四つくらい年下だという。女中としてもかれこれ長く働いているらしい二人は年下であってもあまりそれを感じさせず、同年代の友人のような感覚で気安く接してくれる為、処置を終える頃には三人はすっかり打ち解けていた。

「それで、凪様」
「うん?」

お千代が戻って来るまでの間、話相手になってくれるという二人の言葉に甘えて軽い談笑をしていたさなか、姉の柳が改まった様子で凪へ向き直り、正座した状態でずい、と近付いて来る。
何処か真剣な面持ちで真っ直ぐに見つめられ、気安く返事をしたものの、何となく身構えた凪に対し、彼女は至極真面目に問いかけた。

「光秀様とは何処までお進みに?」
「ッ、ん…っ、けほ…ッ…な、なんて!?」

湯呑みへ口を付けたと同時発せられた一言に、つい噎せた凪が喉元に片手を添えて幾度か盛大に咳き込む。危うく気管支に入りそうになった緑茶をすんでのところで呑み込んだ所為で若干涙目になった織田家ゆかりの姫(偽)見て、女中姉妹は一気に色めいた。

「え!?やっぱりお二人はもう既に深い仲になられたという事ですか!?」
「ほら見なさい、やっぱり光秀様ならやってくださると思ってましたわ…!」
「何をやってくださるって…!!?」

最初が妹の楓、後が柳である。そしてまったく話に着いていく事の出来ない凪が最後に一番戸惑った声を上げる。
きゃあきゃあと楽しそうな様子で顔を見合わせ合った姉妹の内、妹の楓が幾分残念そうに肩を落とした。

「私、三成様を応援しようと思っておりましたのに…」
「分かりますよ、楓。三成様もそれはそれは素敵な殿方ですけど、光秀様と数日過ごされたのなら、もうきっと身も心もとろけてしまうのでは、と思っておりました」

現代のように娯楽の少ないこの時代、否、この時代でなくとも色恋の話に乙女が花を咲かせ、色めき立つのは変わらないらしい。

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