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❁✿✾ 落 花 流 水 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第8章 摂津 肆



「…遊びが本気になったなら、また君に花を贈ろう。どんな表情をしてくれるのか、楽しみだな」

凪へ触れた片手をおもむろに持ち上げ、白く大きな手のひらへ視線を落としながら呟きを零した清秀だったが、ふと背後から聞こえてきた複数の足音を耳にし、着流しの裾を翻して振り返る。

「中川殿!こちらに…ッ、は、八千様!!」

やって来た黒装束の男達は清秀の姿を見つけて声をかけて来たが、その付近で横たわっていた八千の無残な姿を前にし、愕然とした様子で両膝を付いた。
恐らく八千の部下なのだろう彼らは、怨嗟のこもった鋭い眼差しを清秀へ送るも、男は瞼を伏せて至極残念そうな面持ちを浮かべ、緩く首を振る。

「私がここへ来た時には、八千殿はもう…。ただ、この方をこのように無残な姿へ貶めた者の姿ならば、つい先頃目撃したよ」
「……一体何者ですか」

怪訝な色を乗せながらも、一応耳を傾ける気はあったのだろう男の一人が低く押し殺した声色で問いかけた。
清秀はおもむろに着流しの袖口を口元へあてがい、伏せた長い睫毛をそっと震わせる。男達には見えない、あてがった袖口の下へ酷薄な笑みを浮かべ、秘め事を漏らすかのごとく囁いた。

「────…明智、光秀」


────────…


(っていうか、何であの亡霊さんあそこに居たんだろ…偶然って訳でもなさそうだし、神出鬼没過ぎじゃない…?)

亡霊、もとい清秀と森の中程で分かれた凪は、元々の目的地でもあり、清秀にも勧められた通り城の裏にある蔵へとひたすら足を進めていた。
幾度か念の為に背後を振り返って様子を窺ってみたが、あれから自分を追って来る気配は何もない。
清秀は八千に光秀が裏切っていない事を告げたのだから、手を組んだのは間違いないであろうし、恐らくは上手く言いくるめてでもくれたのだろう。

(なんか口上手そうだしな、あの人。どっかの誰かさんと一緒で)

どっかの誰かさん、とは推して知るべし。だが、仮に八千からの追跡を逃れたとしても、重要な問題が残っている事に違いはない。あの男は、凪が【目】の力を持っていると知って追って来ていたのだ。何故あそこまで盲目的に信じたのかは正直わからないが、おかげで手掛かりを得る事が出来たのは間違いない。

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