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❁✿✾ 落 花 流 水 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第8章 摂津 肆



地下牢へ向かった九兵衛によって救出されたという池田は、これまでの経緯をすべて光秀へ語って聞かせた。

元々池田に仕えていた家臣や城仕えの女中達は、ふた月程前に突如やって来た清秀によって全員が地下牢へと放り込まれ、城内には清秀が雇い入れた牢人達がのさばるようになったという。
歯向かう者は容赦なく命を奪われ、女中達は牢人達によって気まぐれに別室へ連れて行かれ、帰って来る事はなかった。
少しずつ減って行く牢内の人数に怯え、最後には誰もが片隅で息を潜めるようになってしまったと池田は語る。

摂津近隣の村へ重税をかけ、それを減税させるといった文句で隣国へ兵糧を運ばせるよう裏で糸を引いていたのも清秀の仕業である。池田の名を騙って御触れを出されてしまっては、当然農民達は従う他なく、他国からも秘密裏に買付を行っていた事などから、光秀が摂津の妙な動きを嗅ぎ取る形となったのだ。
そこに別口で繋がっていた八千が会談場として摂津を指定して来たというのだから、ますます光秀の中では幾つかの疑念が深まっていた。

「…明智殿から最初の文をいただいた時、あの男はそれをそのまま私の元まで持って参りました。そして、【好きなように返事を書け、自分は男の文になど興味はないから、検閲はしない】と申して来たのです」
「…なるほど、それで貴殿は私がこの摂津を調べるよう、不可解な返答を幾つか送って来ていたと」
「左様、明智殿ならば気付いてくださるやもと思い、例の噂の話につきましても提案を受け入れさせていただきました」

池田の言葉を耳にし、これまで思考の片隅に引っ掛かっていたものがするりと解けたような心地になり、光秀は納得した様子で双眸を眇める。

「貴殿は生真面目な御仁。例えいっときの騙りであっても、信長様へ謀反を企てているなどという話を流すなど、了承されないだろうと思っておりました」
「…はい、断腸の思いでしたが、この国をあの裏切り者の好きにさせるなど言語道断。特に有崎の民には…もう戦火など見せたくはなかったのです…」

三年前の戦は籠城戦であり、被害を多く受けたのは城下の民達だ。彼らが再び恐ろしい思いをしないよう、出来るだけ内々に事を進めなければならなかった。

「…貴殿であれば、近くこの摂津も再び落ち着きを取り戻す事が出来るでしょう」
「ありがとうございます…明智殿」

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