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❁✿✾ 落 花 流 水 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第7章 摂津 参



「何があった」

どうやら話を聞いてくれる態勢になったらしいと深く安堵した凪は、一度自らの内心を落ち着かせるようにして吐息を零し、やがて正面に立つ光秀の顔を見上げる。
真摯な眼差しと自らのそれがぶつかり合い、光秀が見たところ何処も怪我などしていない様子を確かめて、おもむろに口を開いた。

「昨日の亡霊の人、いつかは分からないけど八千さんに接触するみたいです」
「……なに?」

果たして一体何事かと考えを巡らせていた光秀だったが、まったく予想していなかった方向の話を持ち出され、片眉を僅かに持ち上げる。怪訝というよりは困惑が色濃い金色の眸に射抜かれ、どのように説明するべきか考えた後、あるがままを伝えるべきかと再度言葉を重ねた。

「もしかして、まだ八千さんと亡霊さんは繋がっていないんじゃないですか?」
「何故そう言い切れる」
「これから、繋がるからです」

確信的な凪の言葉に、光秀は内心で眼を見開く。
確かに凪の言う通り、つい先刻密談を交わして来た八千は、中川清秀との繋がりを持っていなかった。それはじかに光秀自身で確かめて来た事である為、確証がある。

(…先日の毒入り茶の一件、それを清秀殿の所為として八千殿へ報告した時に見せていたあの表情は、驚きと恐怖そのものだった。八千殿は自尊心と野心ばかりが大きく、それ以外はお粗末な小物。そんな男が清秀殿と端から組んでいたなら、俺との会談など設けず、もっと大胆な手段をこうじて来ていただろう)

まさに虎の威を借る狐というやつだ。
当然、つい先程確認して来た出来事である為、凪にそれを知る術はない。にも関わらず、はっきりと言い切れるという事は、即ち。

「あの亡霊さんは、これから起こる何処かで八千さんに、光秀さんが実は織田軍を裏切っていないって事を伝えに来ます。…だから、その…」

それまで毅然と光秀へ伝えていた凪が、ふと言い淀んだ。
そこまで耳にすれば凪が何故言い付けを破り、自分を探しに町へ出たのかなど予想が付く。

(万が一八千殿が先に清秀殿と接触していた場合、俺の身が危険だと案じて飛び出したというわけか。…まったく、この娘は)

内心で深く溜息を零すと同時、彼女が身を危険に晒し、自分の為に町を探し歩いたという事実に苦々しい思いが過ぎった。

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