第8章 双子岬とアイランドクジラ・ラブーン
進水式を終え皆船内に避難した。雨や波に打たれずぶ濡れとなった身体を拭きながらウソップが情けない声を漏らす。
「なぁ~…天候がいい日に入った方がいいんじゃねぇか?その方が気持ちいいって!」
「諦めろ、ウソップ。船長は入る気満々だ。」
そんな彼の願いを打ち消す様にゾロが口を開くとナミとルフィが部屋に入って来た。
「グランドラインへの入り口は、山よ。」
「山ぁ?!」
「そう!これを見て。」
バギーから奪ったと言う海図をナミが机に開き、彼女の言葉に怪訝な顔をしながら皆それを囲む様に覗き込む。
「"導きの灯"が指していたのは間違いなく此処。レッドラインにあるリヴァースマウンテン。」
「山にぶつかれってぇのか?」
「違うわよ、此処に運河があるのよ。」
ナミが運河があると言う所を指差す。例え運河があろうと船が山を登る事が出来る筈ないと、声を荒げるウソップに皆もどうしたら良いのか分からず頭を悩ませる。
「…。」
「おかあさん?」
「花子さん?もしかして、何か知ってるの?」
ユラの身体を拭きながら何か考える様な表情の花子にナミが声をかける。命がかかっているのだから知っている事は話せと懇願するウソップに花子はゆっくりと口を開いた。
「海流よ。この世界には4つの海があって、その大きな海流が全てあの山に向かっているの。」
「成る程…4つの海流が頂上でぶつかりグランドラインへ出るって訳ね!」
「そう言う事。因みに海流に乗れば後は舵次第よ。」
「聞いた事ねぇぞ、船で山越えなんて。」
「俺は少しあるぞ。」
「不思議山の話か?」
「グランドラインに入る事は…半分死を意味するってな。」
「お前っ今そんな怖ぇ事言うなよ!」
冗談なのか本気なのか含みのある言い方をするサンジに身体を震わせウソップが声を荒らげた。
「その事については、ちゃんと舵をとれば問題ないわ。」
「どう言う事だ?」
「リヴァースマウンテンは、海流の層が変わるの。そこに運河の入口がある訳だけど…その運河に乗り損なえば、レッドラインにぶつかって大破しちゃうって事よ。」
「じゃぁ、その運河に乗れば大破はしないってことね。」
そこは航海士の腕の見せ所だと笑顔を見せる花子にナミは任せろと大きく頷いた。