第7章 ローグタウン
スモーカー side
あの日も今日みたいに蒸し暑い日だった。死へと向かっているのにその男はまるで将軍が凱旋した様に堂々としていた。今まさに男が処刑され様としている時、その女は現れた。
ーロジャーっ…!ー
涙を必死で堪え男を見つめる女を見た時、その真っ直ぐな瞳が綺麗だと思った…。
ーーーーーー
緊迫する空気の中、スモーカーはくっと喉を鳴らし花子を見据える。
「お前の親も物好きだな…わざわざ、そんな名を自分の子に付けるなんて。」
「…。」
「まずはこいつを始末してからだ。」
何も言わない花子にスモーカーはバタバタと暴れるルフィに目を向け十手を大きく振り上げる。
「悪運尽きたな。」
「ルフィっ!」
駆け出そうとした花子は目を見開き立ち止まる。地面に組み伏せられ身動きが取れないルフィにそれが振り下ろされる事は無かった。
「…そうでも無さそうだが。」
「?!…てめぇはっ!?」
(この人は…。)
少し掠れた男の声。スモーカーは何故奴がここにいるのかと目を見開きぐっと顔を顰め口を開く。
「政府はてめぇの首を欲しがってるぜ。」
「世界は我々の答えを待っている…。」
含みのある笑みを男が浮かべた瞬間、濁流の様な激しい突風が吹き荒れた。その拍子にルフィは吹き飛ばされ、花子の身体も宙を舞う。
(これはっ…何っ?!)
まるで自分を包み込む様な風に目を細め辺りを見渡した時、花子の目の前に淡い光が現れた。
「?!」
その光に花子は言葉を失う。そこにいるのは会いたくて会いたくて仕方無かった愛しい人…。
(ロジャーっ…?)
ー花子!新しい時代を見届けろ!ー
大好きなキラキラとした笑顔で彼は言い放つと優しい眼差しで彼女を見つめ次第にその光は消えていく。
(待ってっ…!)
花子が彼に向かって手を伸ばそうとした時、更に激しい風が彼女を包み込む。成す術なく吹き飛ばされた花子を受け止めたのは既に出航していたメリー号のマストだった。
「花子さん?!大丈夫!?」
「…ナミ。」
突然飛び込んで来た花子にナミは慌てて駆け寄り心配そうな顔で見つめるが、花子は何も言わずきゅっと唇を噛んだ。