第7章 ローグタウン
"道化"のバギーが"麦わら"のルフィを処刑すると知り街の人々は広場に集まっていた。
「ごめんなさい、もうしません、助けてください。」
「助けるかっ!ボケェッ!」
首と両手に枷を嵌められ項垂れるルフィにバギーの怒号が響く。処刑台の周りにはバギーの部下がこの処刑を邪魔させまいと取り囲んでいた。
「最後に何か一言言っとくか?折角、大勢の見物人がいるんだからよ。」
ルフィの頭を踏み付けニヤリと笑みを浮かべ集まっている群衆に目を向けるバギーの瞳に1人の人物が目に止まる。
(…何だ?)
「俺は…海賊王になる男だぁーっ!!」
何故かその人物から目が離せなかった。言い様のない違和感を感じているとルフィの声が広場に響き渡る。
「なっ…何を言っているんだ…?」
ルフィの言葉に辺りはしんと静まり返る。この街で…この場所でその様な大それた事を言う者がいたのかと…。
「じゃぁ、そろそろいこうかね。…クソゴム。」
苦々しげに顔を歪めたバギーはサーベルを振り上げた。今、まさにルフィの首に振り下ろされようとした時。
「「その処刑!待てっ!」」
力強い声が辺りに響き渡る。処刑を邪魔されたバギーがギロリと睨み付けた先にはゾロとサンジの姿があった。
「ゾロ〜!サンジ〜!」
「まったく…お前は…。何でこんな事になってんだよ…。」
「"海賊狩り"のロロノア・ゾロか…。」
助けてくれと声を上げるルフィに呆れた顔のゾロとサンジにバギーの部下が襲い掛かり、広場は戦場へと一変した。
「ん〜?お前も麦わらの仲間かぁ?」
乱闘の中、ローブを被った人物が処刑台へと近付いて来る。フードに隠れて顔は見えないが何故かバギーはその人物に懐かしさを感じた。
「バギー…。」
「っ?!」
優しく柔らかな声。バギーはこの声を知っていた。
「おめぇ…何者だ?」
違う…そんな筈ない。自分に言い聞かせる様に頭を振ったバギーは怪訝そうな顔でその人物を見つめた。
「その子を…離して?」
「なっ…?!」
フードを取り自分を見上げる人物に目を見開いたバギーは動揺を隠せずにいた。
ーこのボケシャンクスー!?ー
ー何だとっ!このアホバギー!?ー
ーもう…喧嘩しないの。ー
「花子…さん…?」
あの頃と変わらぬ姿で優しく微笑む彼女が目の前にいたのだから…。