第2章 貴方の宝物
バーンッと盛大な登場の仕方をしたキンジに花子、ルフィ、エースは鳩が豆鉄砲を食った様な顔で彼を見つめた。しんと静まり返る部屋。その静寂を打ち消したのは原因を作ったキンジだった。
「花子…はん…?」
そう呟かれた声は微かに震えており、エメラルドの瞳はユラユラと揺れていた。
「もしかして…キンジ…?」
花子に名前を呼ばれた瞬間、くしゃりと顔を歪め今にも泣き出してしまいそうな表情をした。
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「キンジ!帰ってたのか!」
「相変わらず派手な登場だな…。」
一瞬驚きはしたものの久々の再会にルフィとエースは嬉しそうに彼に駆け寄った。しかし、キンジの瞳には1人の人物しか映っていない。
「…糞餓鬼共。」
首根っこを掴むとキンジはポイッと放り投げる様に2人を部屋から追い出した。突然の事に驚きはしたものの、バタンと閉められた扉を叩き声を荒げる。
「おい?!何で追い出すんだよ!?」
「…ちょっと、このお嬢さんと話させてくれ。」
「はぁっ?!てか、鍵まで掛けてやがる!」
ガチャガチャとドアノブを回すがご丁寧に鍵まで掛けられており、訳も分からず中にいるキンジに声をかける。
「…お願いや、少しの間でえぇねん。」
「おい!キン「止めろ、ルフィ。」
扉を壊しそうな勢いのルフィの肩をエースが掴み止める。今まで聞いた事無いぐらいなキンジの弱々しい声。2人の間に何が合ったのか分からないがここはキンジの願いを聞き入れる事にした。
「…俺等はダダンの所に戻ってるからよ。」
「…おおきに。」
未だ納得のいっていないルフィの首根っこを掴みエースはマキノの家を後にした。
「「…。」」
2人の気配が完全に無くなり部屋にはまた静寂が訪れる。無言で立ち竦んでいたキンジは椅子をベッドの横に置くと静かに腰を下ろした。
「…本当に…キンジなの…?」
「っ!」
名前を呼ばれたキンジは震える唇を噛み締めぎゅっと拳を握り花子を睨み付けた。
「その顔で…その声で…ウチの名前を呼んでいい人は…1人だけや。」
会いたくて、会いたくて堪らなかった人が目の前にいる。しかし…彼女は…。
「あんたは…誰や…?」
【あの日】…姿を消してしまったのだから…。