第2章 貴方の宝物
「はぁ~…やっと着いたわ…。」
岬に小型船を着けた男は地面に足を踏み入れ疲れを逃がす様に肩を回した。太陽に照らされた金髪はまるで金糸の様に輝き、エメラルドを思わせる緑の瞳はどんな宝石よりも美しい。くたびれたシャツと柄パンと言うシンプルな服装だが、端整な顔立ちの男の魅力をより引き出していた。
「さぁてと…あの糞餓鬼共は元気かいな。」
自分に会った時の顔を思い浮かべクスクスと笑いながら男は目的の場所に向かって行った。
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コボル山にある一軒家。そこが男の目的地だった。慣れた様子で扉を開けると中からドスの利いた怒鳴り声が飛んできた。
「誰だい!ノックもせずに入って来やがって!」
声の主はコボル山一帯をシメる【ダダン一家】山賊一味の女棟梁カーリー・ダダン。大きな身体を捻り入ってきた男をギロリと睨み付ける。
「ダダンはん、お久しゅう。」
「きききっ…キンジさんっ?!」
キンジと呼ばれた男はへらりと笑みを浮かべ片手を上げ、彼の姿を目にしたダダンは目を白黒させ立ち上がる。
「いいいっ…いつお戻りに?!」
「吃り過ぎやて…。さっき着いたんよ。仕事も一段落付いたしあいつ等の顔見にきたんや。」
今はおらん様やなと、部屋を見渡すキンジにダダンは頬を赤く染めモジモジとしながら口を開く。
「ルフィとエースならマキノの所にいますよ!」
「ほ~かぁ、おおきに。」
にっこりと笑い部屋を出て行こうとした時、キンジは何かを思い出した様にダダンに近付くと彼女の頬に優しく手を当てた。
「すまんかったなぁ、レディの家にノックせんと入ってしまって。」
「?!」
キラキラと眩しく柔らかい微笑みにダダンはボンッと顔を真っ赤にさせ、キンジが扉を閉めたと同時にバターンと盛大に倒れる音と子分の焦った声が部屋に響き渡る。
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キンジ side
ダダンはんにルフィとエースの居場所を教えてもろたウチはマキノはんの所に向かった。挨拶もそこそこに部屋に案内されたら、2人とは別に違う気配を感じた。
(このチャクラは…。)
温かく懐かしいチャクラにウチの胸が大きく脈打つ。そんな筈無い…だってあん人は…。
ーお願いっ…行かせてっ!ー
早鐘を打つ心臓を一旦落ち着かせウチは勢い良く扉を開いた。
「糞餓鬼共!キンジ様のお帰りやでぇ~!」