第6章 魚人と人間
別れの挨拶がこれかとゾロとウソップは呆れた様なそんな目でナミを見つめる。
「おい、変わってねぇぞ…こいつ。」
「またいつ裏切る事か。」
「ナミさん!グゥー!」
「だあっはっはっはっ!」
金を返せ、この悪餓鬼と怒鳴り散らす村人達の表情は言葉とは裏腹にとても優しいものだった。
「ははっ!我が妹ながらやられたわ…!」
その場に崩れ落ちたノジコも呆れた顔をするもナミらしい旅立ちだと、笑顔で手を振る彼女を見つめふと顔を綻ばせた。
「小僧!約束を忘れるな!」
ナミの笑顔を奪ったら自分が彼等を殺しに行く。その事を胸にしっかりと刻み付けておけと言う様に見据えるゲンゾウに、ルフィはニヤリと笑い親指を上に立てた拳を力強く突き出した。
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花子 side
「さてと…じゃあ、私とユラも行くわね。」
小さくなっていく船を背に私はノジコに声を掛けた。仕事も完了したし、私がいなくてももうこの村は大丈夫。
「もう、行っちゃうんだね…。」
「うん、ありがとうね。皆さんもお世話になりました。」
村の人達に頭を下げると口々に感謝と別れを惜しむ声に胸が熱くなる。寂しさが募り俯く私の頭に不意に優しい重みが乗る。
「身体には気を付けるんだぞ。」
「ありがとうございます。」
「ゲンさんありがとう〜!」
思わず顔を上げればゲンゾウさんが優しい微笑みで私の頭を撫でていた。誰かに頭を撫でられるなんて何年振りかしら?少し照れ臭いけどその優しい手に顔を綻ばせていたら、ルフィの声が遠くから聞こえてきた。
「"ゴムゴム"のぉ〜…。」
「?」
何かあったのかしら?不思議に思い振り返ろうとした時、ぐっと襟首を掴まれ物凄い力で後ろに引っ張られた。ちょっと、待って…!まさか…。
「"掴み取り"ぃー!」
「きゃあぁぁあぁっ?!」
「おぉおおぉ〜!」
「花子っ?!」
驚いた様子のゲンゾウさん達の顔がどんどん小さくなっていく。突然の浮遊感に顔が歪むがユラは目をキラキラと輝かせ楽しそうにしている。
(あんのっお馬鹿っ!)
この後の事考えて無いでしょっ!?悪いと屈託の無い笑顔で謝罪をするであろう彼に心の中で悪態を付き、無事に着地出来る事を願い腕の中にいるユラをしっかりと抱き締めた。