第6章 魚人と人間
夜も明け麦わらの一味が村を旅立つ時がやって来た。村を救ってくれた彼等を見送ろうと村人総出で船着き場に集まっている。
「いやぁ〜!宴楽しかったなぁ〜!」
肉も美味かったしと、連日連夜行われた宴を思い出しルフィは楽しそうに笑顔を見せる。
「しかし来ねぇなぁ、ナミの奴。」
「来ねぇんじゃねぇか?」
「えぇっ?!ナミさん来ないのぉー?!」
麦わらの一味の船、ゴーイングメリー号に乗り込み辺りを見渡すがいる筈の彼女の姿がない。首を傾げるルフィに対しゾロが答え、ショックを受けたサンジは項垂れている。
「大丈夫よ、ナミは必ず来るわ。」
信じて待っていてあげてと微笑む花子にルフィは当たり前だとニカッと歯を見せ頷く。ナミが現れるのを待っていると遠くの方から彼女の声が聞こえてきた。
「船を出してっ!」
そう叫んだと同時にナミは船に向かって走り出す。何が何だか分からないが彼女の言う通りにしようとルフィがゾロに声をかけ船は動き出した。
「どうしてだ?!なっちゃん!」
「俺達、ちゃんとお礼もまだっ!」
きっと何も言わずに別れるつもりなのだろう。全力疾走で駆け抜けるナミに村人達は困惑し彼女を止めようとする。
「許さんぞっ!ナミ!こんな別れ方っ!?」
8年間、村の為に必死で耐えてきたナミの門出。ちゃんと見送ってあげたい。ゲンゾウの怒号にも構う事なくナミは器用に村人達を擦り抜け船に向かっていく。
「花子さんっ!ナミを止めてよ!」
「ん〜…。」
彼女にも何が考えがあるのだろう。懇願するノジコにどうするか考えながらナミを見つめていると彼女のある行動が目に入った。
「…ふふ、ナミらしいわね。」
ふっと顔を綻ばせる花子にノジコが怪訝な顔を見せ、遂にナミが船着き場まで辿り着いた。
「っ!」
勢い良く飛び上がり船に着地するナミをルフィ達は無言で見つめる。本当にこれで良かったのか?彼女を呼ぶ村人達の声に胸が痛むが、次に見せたナミの行動にそんな思いは打ち砕かれた。
「…皆、元気でね♡」
「「「っ?!やりやがったなっ!あの糞ガキャアーっ?!」」」
ぐいっと捲くったナミの服からは大量の財布がボトボトと零れ落ち、自分の懐を確認するとある筈の財布が消えている。ちゅっとお札にキスをし可愛らしくウィンクするナミに村人達の怒号が島中に響き渡った。