第6章 魚人と人間
花子 side
「それで、お前は元の場所に帰るのか?」
「…気付いていたんですね。」
暫くゲンゾウさんと話していると彼はフッと笑みを浮かべた。彼には仕事の事を話していない。それなのに何故私がここに自ら来たと気付いたのかしら?
「初めは漂流者だと思っていたがな…だが、お前の雰囲気で只者ではないと思ったんだ。」
「…私もまだまだですね。」
私はゲンゾウさんに全てを話した。彼等を騙していた事を謝罪するとゲンゾウさんは優しく微笑み静かに口を開く。
「お前は私達を救おうとしてくれていたのだな。」
「結局…私は何も出来ませんでした…。」
もっと早く私が証拠を掴んでいれば…私が…アーロンを倒していれば…。
「お前は私達を支えてくれた。…何より、ナミの笑顔を取り戻してくれた。」
私は何もしていない。これはルフィが…ナミが自分の力で切り開いたもの。それなのにゲンゾウさんはありがとうと言ってくれた。
「いつでも遊びに来なさい。お前も、もうこの村の一員なのだから。」
温かく優しい言葉に涙を耐えるのがやっとで…私は何も言わず頷いた。
ーーーーーー
「こんなに村が賑わったのは何年振りかな?」
アーロンの支配に怯えすっかり活気を失った村人達の笑顔を思い出しノジコはナミに微笑みかけた。
「ごめんね…ナミ…。あんただけ辛い思いをさせて…。」
「そんな事…!」
ノジコがいたから…自ら刺青を掘りアーロンのマークを身体に刻み込んだ自分にお揃いだと笑顔を向けてくれた彼女にどれ程救われた事か…。
「こんばんは。」
「「花子さん!」」
お互い笑い合っていると扉を叩く音が聞こえ開けると、ユラを抱えた花子が笑顔で家の中に入ってくる。明日、この村を発つ事を伝えれば2人は寂しそうに眉を下げた。
「ナミ、ルフィの事よろしくね。あの子、ちょっと本能で動く事があるから。」
「あぁ…。」
既に経験済みなのかナミは疲れた様に肩を落とす。しかし、そんな真っ直ぐなルフィだからこそこの村は…ナミは救われた。
「もう、縛られる事は無いの。貴女は…自由に生きていいのよ。」
自由など無いと思っていた。例え村を買ったとしても自分はアーロンから逃げる事は出来ないのだと…。
「っ!うんっ…!」
涙に震えるナミの身体を花子はそっと抱き締めた。