第6章 魚人と人間
「そんな事よりナミ。貴女、彼を逃す為に来たんでしょ?」
「!そうだ、こんな馬鹿と話してる場合じゃないわ!」
「てめぇ…言わせておけばっ!」
手に持っていた短刀でゾロの縄を切るとナミはアーロンが帰って来る前に逃げろと伝える。
「花子さんも待ってて!すぐに錠の鍵を見つけて来るから!」
「それは無理ね。」
花子の錠の鍵はアーロンが持っている。それならゾロが鎖を斬れば良いと言うが、それも無理だと花子は首を横に振った。
「確かに君は強いだろうけど、この鎖を斬る事は無理よ。」
「…言ってくれんじゃねぇか。」
花子の言葉にピクリと眉を動かせたゾロは刀を抜き錠に繋がっている鎖を斬り付けた。しかし、それは硬くゾロの力を持ってしても傷1つ付ける事は出来なかった。
「この錠は海楼石で出来ているの。これを斬るには君はまだ力不足よ。」
「…チッ!」
だったらどうすれば良いのだと頭を悩ませる2人に花子は自分に構わず行けと微笑む。
「そんなっ!花子さんを置いてなんてっ!」
「私の事は大丈夫。それよりもアーロンが帰って来たらナミの努力も水の泡になるわ。」
それに、と何かを言いかけた花子は言葉を詰まらせ2人に笑いかける。自由の身となったゾロは部屋を出ようとしてふと彼女に振り返った。
「…必ず助ける。」
「ありがとう。でも、私の事よりナミを守ってあげて?」
まだそのネタを引っ張るのかと重い溜め息を漏らしナミの背を押し牢屋から出て行くゾロ達に向かって花子は口を開いた。
「ナミ!大丈夫よ。あなたの思いはきっと報われる。」
「っ!うんっ…!」
温かく優しく自分を包み込んでくれる花子の笑顔を目にし、ナミは涙を堪える様に唇を噛み大きく頷いた。
(おい、ナミ。あの女は何者だ?)
(…あんたには関係無いでしょ。さっさとどっかに行きなさい。)
(この野郎っ!)