第5章 ココヤシ村
花子が去った後、部屋の中はシン…と静まり返る。しかし、その静寂を破ったのはノジコだった。
「ナミ!あんた花子さんに失礼でしょ!」
「ノジコこそ何であの女と仲良くしてんのよ!あいつはっ…アーロンの仲間なのよっ!?」
顔を歪め叫ぶナミにノジコは目を見開いた後、呆れた顔で溜め息を漏らす。
「あんた、何言ってんの…花子さんとユラちゃんはつい3ヶ月前にここに来たのよ。」
「そんなの嘘に決まってる!だって私は見たもの!あの女がアーロンにお金を渡している所を!」
まずこの村に辿り着いたのにアーロンに殺されない事がおかしい。だとしたら、彼女は元々アーロンの仲間で何か理由があって彼の元を離れていたのだとナミは推測する。
「ちょっと待って!お金ってどう言う事…?」
「そのまんまの意味よ。あの女、沢山のお金を渡してた。それこそ村の皆の分を賄えるぐらいの!」
きっとこの村みたいに何処からか強奪したに決まっていると、苦々しげに顔を歪めるナミに対しノジコの瞳が困惑した様に揺れる。
「…ねぇ、ナミ…花子さんが来たのは3ヶ月前って言ったわよね?」
「それが何なのよ。」
ノジコはここ3ヶ月の間にあった事を話す。花子とユラが海賊に拐われ命からがらこの村に辿り着いた事。そして…彼女が現れてからアーロンが村に求める徴収が減った事。
「もしかしたら花子さん…私達の為にお金を肩代わりしているのかもっ…!」
「そんなわけっ…!」
「でも!じゃないと辻褄が合わないよっ!」
最初は何故アーロンが徴収を減らしたのか分からなかった。しかし、そのお陰で村人達の生活が楽になったのも事実。
「花子さん…たまに何日か家を開ける事があるの…。もしかしたら、私達の為に危ない仕事をしているのかも…。」
「っ!だったらっ…何で助けを呼んでくれないのよっ!」
外部との繋がりを断つ為にアーロンは村人に外に出る事を禁じた。自分も外には出られるがこの村を人質に取られているから助けを呼ぶ事も出来ない。
「きっと花子さんにも理由が…。」
「っ…もういいわよっ!」
「ナミッ!」
花子の肩を持つノジコに苛立ちを覚え悔しそうに顔を顰めたナミは声を荒らげ家を飛び出して行った。