第5章 ココヤシ村
花子がココヤシ村に来て早3ヶ月経つ。初めは彼女達を怪しんでいた村人達も少しずつではあるが心を開き始めていた。
「こんにちは。ユラを迎えに来たわ。」
「あぁ、アーロンさん達ならプールの方にいるぞ。」
大きな麻袋を抱え声を掛ける花子に門番の魚人は馬鹿にした様な笑みを浮かべ口を開く。
「お前も馬鹿な奴だな。あんな奴等の為に金を肩代わりするなんてよ。」
「そう?お世話になってるんだからこれぐらいはしないと。」
花子は村人の分の金も倍で払う事を条件に彼等に手を出さない事をアーロンに約束させた。流石に全てを無しにする事は示しが付かないと却下されたが、以前の徴収よりかは遥かに少なく村人達の生活も幾分か楽になっていた。
「俺には分からねぇな。あんな奴等放っておけばいいのによ。」
「人間には持ちつ持たれつって言葉があるのよ。」
お疲れ様と出先で買ってきた土産を渡しパーク内に入って行く花子の背中を魚人は罰が悪そうな顔で見送った。
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「こんにちは、これ今月分よ。」
「相変わらず仕事が早ぇなぁ。」
パーク内にあるプールサイドの椅子に深々と腰掛けアーロンはニヤリと笑みを浮かべながら金の入った袋を受け取る。
「外部には漏らしてねぇだろうな。」
「疑り深いわね…。どうせこれで聞いてたんだから分かるでしょう?」
ウエストポーチから取り出した小型の電伝虫をアーロンに差し出し花子は呆れた顔を見せる。これは盗聴用の電伝虫で彼女が裏切らない様にアーロンが持たせた物だ。
「おかあさん!おかえりなさい!」
「ただいま、ユラ。いい子にしてた?」
「うん!今日はね、モームと遊んだの!」
アーロン一味のペット海牛のモームの頭の上に乗っているユラを花子は柔らかい微笑みを浮かべ抱き上げる。
「そう、モームありがとう。ユラと遊んでくれて。」
労う様に優しく頭を撫でる花子にモームは大きな顔を擦り寄せ甘える様にひと鳴きした。
「アーロンさん!ナミの奴が帰って来ましたぜ!」
「今日は騒がしいな。」
(ナミ?)
聞き慣れない名前に花子は首を傾げるも現れた人物に驚き目を見開いた。
「今、帰ったわ。アーロン。」
そこに現れたのはオレンジ色の髪をした人間の少女だった。