第5章 ココヤシ村
花子達がアーロンに連れて行かれ助けに向かおうとするゲンゾウをする村人達が必死に宥めていた。
「止めるなっ!早く行かねば彼女達がっ!」
「もう手遅れだ、ゲンさん!諦めようっ!」
海賊から命からがら逃げ出せたのにまた酷い目に合っているであろう花子達を思い、ゲンゾウが悔しそうに歯を食い縛る。
「俺達じゃどうにも出来ねぇよ!」
「この村に辿り着いちまったあの子達の運が悪かっただけだ。」
可哀想だが諦めるしかないと、項垂れる村人達に顔を歪めたゲンゾウの怒号が辺りに響き渡る。
「お前達はっ、あの2人が心配では無いのかっ!?」
「でも、俺達の力じゃ…。」
アーロン一味の恐ろしさは痛い程身に沁みている。逆らえば自分達の身が危ない。気まずそうに視線を逸らす村人達をゲンゾウは睨み付けた。
「あの…どうしたんですか?」
自分1人でも助けに向かうと飛び出そうとしたゲンゾウにアーロンパークに連れて行かれた筈の花子が眉を下げ遠慮がちに声をかける。
「お前達っ、無事だったのか!?」
「えぇ、取り敢えずは。」
慌ただしく駆け寄り怪我は無いかと心配そうに尋ねるゲンゾウの様子に、花子は力無く微笑み大丈夫だと頷く。
「兎に角、早くここから逃げるんだ!」
「でも、もうここに住む許可を貰ったんですよ。」
「何だと?!」
何故、態々そんな事をしたのか。まず、金はどうしたのか。予想外の返答にゲンゾウは驚きを隠せずにいた。
「船も無いし、私達には行く宛が無いんです…。ご迷惑はかけませんので私達をここに置いてください。」
ユラを抱え頭を下げ必死に懇願する花子の姿がある人物と重なり、ゲンゾウはぐっと言葉を詰まらせる。
「…分かった、お前達を迎えいれよう。」
「ありがとうございます!」
「おじさん、ありがとう〜!」
嬉しそうに笑い合う2人の姿を見つめゲンゾウは懐かしそうに柔らかく微笑んだ。
(それにしても、金はどうしたんだ?)
(それは…企業秘密で♡)
(?…まぁ、何かあったら相談しなさい。)
(ありがとうございます。)