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海賊王の懐刀

第5章 ココヤシ村


アーロン side


ー【ユラヒメ】って知ってるか?ー

昔…タイの大兄貴がそんな事を話していた。海に愛された俺達、魚人の姫。そんな御伽話みてぇな事ある筈ねぇと思っていた。

ー俺達、海の種族が触れると本能がそいつを愛おしい、尊いと思うらしいぜ。ー

そんなの迷信だと思っていた。だが、この餓鬼に触れた時、俺の本能が叫んだ。この餓鬼が愛おしい…守りたいと…。

「お前は…俺達、魚人の事をどう思う。」

「ぎょじん?アーロンはアーロンだよ?」

訳の分からねぇって顔で首を傾げる餓鬼を見ると不思議と心が穏やかになる。まさか、こいつが【ユラヒメ】なのか?

「そろそろユラを返してくれる?」

「…ほらよ。」

俺達を見つめる女にまた怒りの感情が湧き上がる。この女も同じか。見た目が自分達と違うだけで蔑み忌み嫌う…愚かな下等種族だ。

「人様の身体を勝手に触ったら駄目でしょ?触る時は触っていいですか?ってちゃんと聞かないと。」

「ごめんなさい…。」

「…。」

こいつ等は馬鹿なのか?何故、俺を恐れない?お前等は下等種族は俺達魚人を恐れ、泣き叫び命乞いをする生き物だろう。

「…お前等がこの島に住むとして金は払えるのか?」

「その事なんだけど…私と取引しない?」

「取引だと?」

ニヤリと笑みを浮かべた女はここに来る時に持ってい麻袋に視線を移す。中身を確認すると金が入っていた。

「お前、こんな金を何処から手に入れた?」

「言ったでしょ?海賊に拐われたって。逃げる時に少しだけ貰ってきたの。」

悪戯に笑む女の言葉に耳を疑う。ここにある金は村の奴等全員を2ヶ月賄える量だ。

「お前、何者だ?」

「普通の只の女よ。でも、私達をここに住まわせてくれるのならこの倍のお金を支払うわ。お金を工面するには海に出ないといけないけど。」

この倍だと?ふざけた事を言いやがる。それに、下手に外に出られて俺達の事を漏らされても困る。が、もしそれが本当ならこの女を殺しちまうのは惜しい。

「いいだろう。…だが、条件がある。」

金を工面している間、この餓鬼を俺達の所に預けるのが条件だ。もし、女が途中で野垂れ死んでも【ユラヒメ】は手に入る。

「…交渉成立ね。」

「あぁ、仲良くやろうぜ。」

この女が何処まで耐えれるか見ものだな。

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