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海賊王の懐刀

第5章 ココヤシ村


「何の様だ!今月の金は払った筈だぞ!」

ギザギザとした鋭い歯を剥き出しにしニヤニヤとゲンゾウを見下ろすのは魚人海賊団アーロン一味の船長"ノコギリ"のアーロン。青い肌にノコギリの様な長い鼻。ギラギラとした鋭い眼光は彼の残忍性を表している。

「部外者を匿っているらしいな。…差し出せ。」

「そんな者、ここにはおらん!」

いないの一点張りのゲンゾウにアーロンは水掻きの付いた大きな手で彼の首を掴み上げた。

「ぐっ…!?」

「ゲンさんっ!」

「聞こえねぇなぁ…。もう1度聞く…匿っている奴を出せ。」

足が地面から離れ苦しそうに顔を歪めるゲンゾウに村人達が駆け寄ろうとするのをアーロンの部下が止める。2度目は無いとでも言う様に見据えるアーロンをゲンゾウは鋭い目で睨み付けた。

「そんな者っ…知らんっ…!」

「そうか…なら…死ね。」

止めてくれと懇願する村人の悲鳴が辺りに響き渡る。ゲンゾウの首を圧し折ろうとアーロンが手に力を込め様とした時。

「部外者と言うのは…私の事かしら?」

「あ?」

「何故っ…?!」

凛とした声に目を移すとそこに現れた人物にゲンゾウは目を見開いた。花子はゆっくりとアーロンに近付きじっと彼を見据える。

「私に用があるのでしょう?早くその手を離して。」

「随分と威勢のいいな。」

花子の態度が気に入らなかったのかアーロンはゲンゾウの首を締め上げ様とするも、彼女の鋭い眼差にピクリと眉を動かした後、舌打ちを溢しまるで物を放る様にゲンゾウを投げ捨てた。

「ゴホッゴホッ…っ!」

「ゲンさんっ!大丈夫かっ!?」

咳き込むゲンゾウに駆け寄る村人達を横目にじっと自分を見つめる花子にアーロンは口を開いた。

「この村に辿り着いたのはお前だけか?」

「…後1人、子供がいるわ。」

ユラの事は隠しておいた方がいいのだが嘘がバレてしまうと後々面倒になる。何より身を挺して自分達を守ろうとしたゲンゾウ達が危険に晒されるかもしれない。

「嘘を付いたんなら見せしめに村の奴等を殺してやろうと思ったが…まぁいい、餓鬼を連れて来い。」

「…分かったわ。」

1度、病院にユラを迎えに行く花子を心配そうな目で見つめるゲンゾウ達を彼女は優しく微笑みかけた。

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