第5章 ココヤシ村
花子 side
"ココヤシ村"に来て1日が経ち、この村の駐在であるゲンゾウさんが私達の元を訪ねて来た。ここまで来た経緯を話すと彼も先生同様、辛かったなと眉を下げ悲しそうにユラを見つめる。
「あの…お世話になってこんな事を頼むのは厚かましいと思うのですが…私達をこの村に置いてくれませんか?」
「それは…。」
「お金なら払いますっ…!今はありませんが働いて必ずお支払いしますっ…!」
必死に懇願する私にゲンゾウさんは顔を顰め言葉を詰まらせる。それはそうよね…。態々、海賊が支配している村に住まわせ様なんて思わないもの。
「私も出来ればお前達をここに置いてやりたいが…今、この村はアーロン一味と言う海賊に支配されている。住むには奴等に金を払わねばならん。」
大人なら10万ベリー、子供なら5万ベリー。村の状況を見るに自分達の生活を守るだけでやっとね…。外に働きに行くにも外部に助けを求めない様に海に出る事は禁止されているみたい。
「悪い事は言わん。船があるなら早くここを立ち去れ。アーロンに見付かれば何をされるか…。」
「…あなた達はどうするんですか?」
もし私が船でここに辿り着いたと思うのなら何故助けを呼ぶ様に求めないのかしら?まぁ、初対面の相手だから信用出来ないとは思うけど。
「…あの子が必死で耐えているのに私達だけ逃げ出す訳にはいかん。」
そう言ったゲンゾウさんは悔しそうに歯を食い縛った。何か逃げ出せない理由がありそうね。
「お前達の事は必ず逃してやる。だから「ゲンさん!大変だっ!?」
諭す様な目をしたゲンゾウさんの言葉を遮る様に、村人が切迫した声で病室に飛び込んできた。
「病人がいるんだ、もっと静かに「アーロン一味が村にやってきた!?」
「何だとっ?!」
村人の言葉にゲンゾウさんの顔に緊張が走る。どうやら私達の事を聞きつけたアーロン一味が村に乗り込んで来たみたい。
「直ぐに向かう!…お前達はここから出るんじゃないぞ!」
それだけ伝えるとゲンゾウさんは村人と一緒に慌てて病室を飛び出して行った。
「おかあさん…。」
「…馬鹿な人達ね。」
私達の事なんて直ぐに差し出せばいいのに…。不安そうな顔をするユラの頭を撫で私は静かに病室を出た。