第5章 ココヤシ村
花子 side
「さてと…じゃあユラ、行くわよ。」
「うん!」
私はユラを背負い海に飛び込んだ。乗っていた小舟には穴を空けたから直に沈むわね。
「ユラ、大丈夫?」
「うん!」
なるべくユラの顔が水に着かない様に肩車をして泳ぎ進めて行き目的の島の海岸に辿り着いた。ユラを抱え直し辺りを見渡すけど周りには人はおらず波の音が響き渡る。
「取り敢えず、村に行ってみましょう。」
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暫く歩いていると人の気配がした。物陰に隠れ伺っていると数人の村人の人が何か話している様子。
「ユラ、今から村の人達に会うから言った通りにしてね?」
「わかった!」
小声で言い聞かせると少し緊張した面持ちのユラの頭を撫で私はユラを抱え飛び出した。
「お願いしますっ…!助けてくださいっ…!」
「誰だっ?!」
突然現れた私達に村人達は驚いた様に目を見開く。そんな彼等をよそに私はふらふらと覚束無い足取りで彼等に近付き力無く膝を付き叫ぶ。
「水をっ…!少しでもいいのでこの子に水をくださいっ…!」
涙を浮かべ懇願する私に彼等は困惑しながらも駆け寄ってくれた。1人の村人が慌てて水の入ったコップを差し出してくれて、私はそれを受け取るとそっとユラの口元に持っていく。
「おか…さ…。」
「ユラっ…!しっかりしてっ…!」
「早く医者の所にっ!」
私の娘、女優になれるわ。ぐったりとしたユラに呼び掛ける私を抱え男の人が急いで医者のいる所へ駆け出していく。
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「安静にしていれば直に良くなる。」
「ありがとうございます…。」
穏やかな顔で眠りに着いているユラの頬を撫でホッとした顔をする私に先生は何があったのかと尋ねた。
「海賊に拐われて…やっとの思いで逃げ出した所…この島に辿り着いたんです…。」
「そうか…。」
涙を流す私に眉を下げ辛かったなと優しく肩に手を置く先生に、仕事とは言え彼を騙している事にツリキと胸が痛む。
「今日はゆっくり休みなさい。」
何かあれば声をかけてくれと部屋を出て行った先生にお礼を伝え私はこれからの事を考えた。
(…ユラ、お疲れ様。)
(すぅ~…。)
(…ユラ?)本当に寝てる?