第5章 ココヤシ村
花子 side
「おかあさんっ!見て!お魚がたくさんっ!」
「あんまり乗り出したら危ないわよ。」
小舟に身を乗り出し楽しそうにしているユラを見つめ思わず顔が綻ぶ。結局、ユラと離れるのが嫌で私は今回の任務はユラを連れて行く事にした。
ーおかあさんとおでかけっ!ー
危険はあるもののあんなに嬉しそうなユラを見てしまうと連れてきて良かったと思っている。
(それよりもルフィね…。)
私とユラが長期間、離れると知った時の彼の顔は今も忘れられない。この世の終わりの様な絶望した顔だった。
(早く終わらせて帰らないとね。)
期限は2年。それまでに仕事を終わらせて旅立つ彼をちゃんと送ってあげないと。
「おかあさん!イルカさんだよ!」
「可愛いわね。」
海を眺めているユラの元に1頭のイルカが近付いて来た。そのイルカは何かを伝える様に忙しなく鳴き声を上げている。
「本当に?ありがとう!」
「?どうしたの?」
「イルカさんがもう少ししたら嵐がくるから気を付けてって!」
ユラはこうして生き物と会話が出来る。元々、龍神の生贄としてあの場所に閉じ込められていたから、もしかしたら不思議な力があるのかもしれないけど…。
ー知ってるか?この世界には海に愛された奴がいるらしいぜ。ー
(まさか…ね…。)
昔、ロジャーがそんな事を話してくれた。海の声を聞きこの世の全てに愛されし者…。その者が怒れば大地が割れ、その者が涙を流せば嵐を呼ぶ…。
ーその名は…【ユラヒメ】。ー
「おかあさん!見て!」
声を上げたユラの指す方に目を向けると黒雲が空を覆っているのが見えた。さっきのユラの言っていた通りね。
「危ないからユラは中に入ってなさい。」
「うん!イルカさんが教えてくれてよかったね!」
にっこり笑顔を見せるユラの頭を撫でながらキンジの言葉を思い出す。
ー花子はんが少し離れとった時があったやろ?そん時、ウチもまだ気付かんかったんにユラは花子はんが帰って来た事に気付いたんや。ー
1羽の鳥がユラの肩に乗った時、ユラは突然港に走り出したらしい。キンジが言うにはその鳥とユラは何か会話をしていた様に見えたらしい。
(少し調べてみる必要がありそうね。)
取り敢えず、今はこの嵐を無事に抜けないとね。