第4章 瑠璃色の瞳の少女
色々ゴタゴタしたがエースは荷物を抱え直し見送りの者達の顔を見渡した。
「んじゃ、行くわ!」
「またなぁ、エース!」
「身体には気を付けてね。」
「えーす!いってらっちゃい!」
「さっさと行け、ボケ。」
「…キンジ。」
沢山の人に見送られ晴れやかな顔をするエース。何か思い出したのか花子に手招きし首を傾げ近付く彼女の腰をそっと引き寄せた。
「?!」
「…またな。」
「エー…ス…。」
それは一瞬だった。ちゅっと唇に柔らかい感触を感じ目を見開く花子を、悪戯が成功した子供の様にニッと笑うと、エースはそのまま船に飛び乗った。
「っぬぁにしとんじゃ!糞ガキャアアァー!?」
「じゃなぁ~!元気でなぁ~!」
「戻ってこんかぁー!シバき倒したるっ!?」
烈火の如く怒り狂うキンジの怒号が辺りに響き渡る。何とも騒がしい船出だったがエースは嬉しそうに笑顔を見せ大きく手を振った。
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船を出航させ少しの事。エースは見送りに来ていない人物の顔を思い浮かべる。彼女の性格は理解していたが、最後にちゃんと別れの挨拶をしたかったのが本音。
「っ?!」
「エースーッ!!」
船が通る岬にその人物はいた。目から大量の涙を流し大きく手を振るのは、間違いなく自分を育ててくれたダダンの姿。
「頑張れよーっ!!」
エースはぐっと唇を噛むと厳しくも優しい母親に笑顔を向け大きく手を振り返した。
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「!…ふふっ、本当に不器用な人。」
「…ホンマやなぁ。」
ダダンがエースを見送った事は誰も知らない。しかし、花子とキンジは見聞色の覇気で2人の様子を感じとっていた。
「…私も、彼女の様な母親になれるかしら?」
「大丈夫や。」
ポツリとユラの頭を撫で呟く花子の肩をキンジはそっと抱き寄せ、穏やかな表情で2人を見つめた。
(まずは、煙草から始めてみようかしら。)
(ホンマ、形から入るなぁ…。後、煙草はアカン。)身体に悪いし、ユラに悪影響や!
(おかあさん、イメチェン?)
(そうそう。)