第4章 瑠璃色の瞳の少女
騒がしい宴から一夜明け。遂にエースの旅立ちの時が来た。岬にはエースを見送ろうと村の者やダダンの子分の姿があった。
「ダダンさんは?」
「煩いのがいなくなって清々するって。」
「ふふっ、あの人も素直じゃないわね。」
今頃、自分の住み家でエースとの別れに涙をしている彼女を思い浮かべ花子は可笑しそうに笑みを浮かべる。エースも彼女の性格を分かっているからか気にしていない様子。
「花子。」
「身体には気を付けてね。何処でも寝たら駄目よ?」
ルフィと言葉を交わしエースが花子に近付いてきた。今生の別れと言うわけではないが、今までの様に会えなくなると思うと寂しさが募る。
「あの日の事、覚えてるか?」
「…エースが生まれてきてくれて嬉しいって?」
「…今でも、そう思うか?」
少し不安そうな顔で尋ねるエースの頬に手を当て花子は柔らかく微笑み頷いた。
「勿論よ。今も、これからも私はあなたに出会えて…エースが生まれてきてくれた事が嬉しいわ。」
「っ!初めてお前がそう言ってくれた時、俺は同情だと思った。」
ロジャーの船に乗っていたから、彼の事を知っているから花子はそんな言葉を投げ掛けたのだとエースは思っていた。
「でも、お前はっ…俺自身を見てくれたっ…!」
泣き出してしまいそうなエースの顔を引き寄せ花子は彼の額にそっとキスを落とし微笑みかける。
「エース…あなたは誰でもない。あの人の子でもない。あなたはエースと言う1人の人間なのよ。」
ぐっと顔を顰めエースは花子を搔き抱いた。歯を食い縛り泣くのを耐える様に強く…。
「好きだっ…。」
「え…?」
「あの時から…俺はっお前の事が好きだった。」
初めて知ったエースの想い。突然の事で放心状態の花子の目をエースは真っ直ぐに見つめた。
「今はあいつの事を忘れられなくてもいい。でも…俺があいつを超えて強い海賊になったら…。」
今、答えを迫ればきっと花子は困ってしまう。そして、彼女の答えが自分の望んでいるものでは無い事をエースは分かっていた。
「俺と…結婚してくれ。」
いつか…花子が自分を1人の男として見てくれる時まで…。