第4章 瑠璃色の瞳の少女
花子 side
エースが向かった先は海の見える岬だった。ここはエースとルフィが私を見付けてくれた場所。そして、エースに私の胸の内を話した場所。
「今日は…月が綺麗ね。」
「あぁ、そうだな。」
岬の先に座るエースの隣に腰を下ろし銀色の満月を眺め呟く。思わず出たその言葉に私は堪らず笑い出してしまった。
「…何だよ。」
「ふふっ、ごめんなさい。ちょっと、思い出して。」
突然、笑い出す私をエースは怪訝な顔で見つめる。少し昔の話をしようかな。あれは私がロジャーの船に乗っていた時。あの日も今日みたいに月が綺麗な夜だった。
「私の故郷ではね…【愛している】って意味を込めて【月が綺麗ですね】って言う事があるの。」
「…何かまどろっこしいな。」
「私もそう思うわ。」
宴を楽しんでいる皆の声を聞きながら徐にロジャーは私に腕輪を差し出した。少し恥ずかしそうに頭を掻きながら…。
ー俺の大事なもんだ…大切にしろよ。ー
「嬉しかった…。だって彼から貰った初めての贈り物だったんだもの。」
「…。」
「その後にね、月を見上げ彼はこう言ったの。」
ー月が…綺麗だな。ー
そう言われた時、ドキッと心臓が高鳴った。もしかしたら彼も同じ気持ちなのかもしれないって。
「よく考えれば、あの人がそんな事知っている筈無いのにね。」
「…お前は何て答えたんだよ。」
「私は…。」
ー私には…月はずっと綺麗に見えていたよ。ー
私は貴方の事が前から好きだった。そんな意味を込めて言ったけど、あの人はそうかとそれだけしか言わなかったわ。
「何で花子はあいつに伝えなかったんだ?」
「…きっと私は怖かったんだと思う。」
「怖い?」
「今の関係が崩れる事が…この想いを伝えてあの人が私に笑い掛けてくれない事が…。」
あの人の側にいられるのならこの想いはそっと仕舞っておこう。でも、それは只私が臆病だっただけ…。
「ごめんね…こんな話つまらなかったわね。」
「…いや、お陰で決心がついた。」
そう言うとエースは立ち上がり目の前に広がる海を見つめ大きく息を吐く。。
「花子…俺と一緒に海に出よう。」
ー俺と一緒にこい!ー
私を見つめるエースの真っ直ぐな目があの日のロジャーと重なって、思わず私は息を飲んだ。