第4章 瑠璃色の瞳の少女
泣き疲れ眠るユラを花子はベッドに寝かせる。子供特有の丸い頬には涙の跡が残っているがその寝顔は安心しきった様に穏やかだった。
「いや~、それにしても盛大に泣いとったなぁ~。」
「私もあんなに泣いたユラを見たのは初めて。」
実の母親との別れの時も涙は流したものの何かに耐える様に啜り泣くだけ。夜魘されていた時でさえ、ユラは泣き叫ぶ事はしなかった。
「ウチな…正直どうしようか悩んでてん。」
「何が?」
「ユラが泣き叫んだらどないしようって。エースやルフィの時はダダンはんおったし、男やから多少ドツいても大丈夫やったけど。」
「…止めなさい。」
しかし、ユラは泣く事はしなかった。只、耐える様に花子の服を抱き締めるだけだった。その姿が痛々しくキンジには耐えられなかった。もっと泣き叫び駄々を捏ねてくれた方がマシだと思える程…。
「ユラは…ちゃんと花子はんの事、母親やと思てんで?」
「…気付いてたの?」
「花子はんの事やったらなぁんでも!」
戯けて見せるキンジに花子は困った様に笑みを浮かべると、モゾリとユラが動き花子の服の裾を握り締めた。
「おかさん…。」
「可愛いっ…。」
「…花子はんも意外と親馬鹿やなぁ。」
そう言いつつもユラを見つめるキンジの目はとても優しいものだった。エースやルフィに対する態度でも思ったのだが、彼も意外と子供好きなのかもしれない。
「せや、花子はん。ウチ等の"おとさん"から伝言やで。」
「え?」
"おとさん"と言う言葉に花子はキョトンとする。それは孤児だった自分達を育ててくれた恩師であり、育ての親。
「"連絡ぐらいしてこんか、この馬鹿娘"…やそうや。」
「っ!」
「あん人も、心配してたんやで?」
ロジャーと海に出る花子を笑顔で送り出してくれたあの人。しかし、内心は彼女の事をずっと気に掛けていたのだろう。
「ふふっ。私達のおとさんも随分と心配性ね。」
「そらこぉんな破天荒な娘がおったら、気が気やないやろ。」
「それはキンジも一緒でしょ?」
今度、連絡をしてみよう。あの人は何て言うだろう?怒られるだろうか、それもと良かったと涙を流すだろうか。久々の恩師との思い出に花子はふっと顔を綻ばせた。