第4章 瑠璃色の瞳の少女
花子は悩んでいた。ユラを迎え半年が経とうとしている。元々、余り人見知りをしないユラはすぐに村の者にも可愛がられた。
「ユラ~!今日は何して遊ぶか~?」
「るふぃ!あそぶ!」
「ユラ、足元は気を付けるんだぞ?」
「えーす!あいっ!」
「ユラ~♡新しいおべべ買ってきたでぇ~♡」
「きじ!あーがと!」
「…。」
ルフィやエースも年の離れた妹の様に何かとユラの世話を焼いてくれるし、初めはユラを育てる事にいい顔をしなかったキンジも、今やユラの可愛さにデレデレだ。何も悩む事は無いのだが…。
「ねっ!ねっ!」
「ふふっ、良かったね。」
花子の悩みとはユラが自分を【ねっ!】を呼ぶ事だ。多分【ねぇね】と呼んでいるつもりなのだろうが、ユラを育てると決めた花子としては【お母さん】と呼んで欲しいのが本音。
「そう言や花子はん今から仕事やったな。」
「えぇ、ユラの事よろしくね。」
キンジから貰った服を嬉しそうに抱え駆け寄ってくるユラを抱き上げる花子は、これから仕事に向かう為、キンジ達にユラの面倒を見る様にお願いにきた様だ。
「どっか、いく?」
「うん。明後日には帰ってくるから、いい子で待っててね。」
「…あい。」
ユラが来てから長期の仕事はキンジがやっていたが、今回はどうしても花子でなくては難しい仕事。初めて長い間離れると知りユラは眉を下げる。
「それじゃあ、行ってきます。」
「気を付けて行けよ。」
「土産楽しみにしてるぞぉ~!」
「寂しゅうなったらいつでも連絡してえぇからなぁ~!」
「…いってらちゃい。」
キンジに抱えられ遠慮がちに手を振るユラの頭を撫で花子は口寄せ獣である朱雀を呼び出すと飛び去っていった。
「…。」
「大丈夫やで、ユラ。」
不安そうに花子の去った方角を見つめるユラの頭を優しく撫でキンジは微笑みかける。
「花子はんなら大丈夫や。あんたのお母はんはユラを置いて何処にも行かん。」
「…あい!」
元気良く返事をするユラだったが何処と無く元気がない。花子の仕事内容を見直すかとこの時キンジは本気で考えた。