第3章 生まれてきてくれて…
「ねぇ、ニューゲード。あなた、体調が悪かったりしない?」
「…あ?馬鹿言ってんじゃねぇよ。俺ぁピンピンしてるぞ。」
「…そう。」
伺う様な花子の目に白ひげの胸がドキッと脈打つ。確かに最近気だるさを感じるがそれは年のせいだとさして気にしていなかった。彼の胸に手を当て花子は深く息を吸いそっと目を閉じる。
「…。」
「お前、何を?」
花子に触れられた所が熱くなる。花子が手に力を込めると淡く光を放ち白ひげの身体から黒く淀んだ野球ボール大程の玉が抜き取られた。
「そりゃあ何だ?」
「あなたの身体の悪いものを抜き取ったの。」
気休めだけどねと、力無く笑った花子の掌にある玉が燃え火の玉へと姿を変える。ふっと息を吹き掛けるとそれはフヨフヨと空へ登っていき、パチンッと花子が指を鳴らした瞬間パンッと音を立て弾けた。
「何だっ?!」
「花火…?」
突然の爆発音に隊員達は一瞬身構えるもキラキラと輝く花火に目を奪われた。空に咲く花は花弁を散らし儚く消えていく。
「今日出会えた記念にね。あなたには長生きしてもらわないと。」
自分に向けられた笑顔は柔らかいものであったが、白ひげには花子が泣いている様に見えた。暫く余韻に浸っていると、ふと膝に重みを感じた。
「花子?」
「ごめんなさい、少し…疲れたみたい。」
自分の膝に凭れ掛かる花子に年甲斐も無く鼓動が早く鳴るのを感じる。穏やかな寝息を立てる花子の頬をそっと撫でると、その大きな指に甘える様に擦り寄ってきた。
「ロ…ジャー…。」
「グラララッ…俺の側で寝てんのに、他の男の名を呼びやがって…。」
「親父…今のは?」
笑みを溢す白ひげをマルコは心配そうな顔で見つめる。花子から黒い玉を抜き取られた瞬間、身体にあった気だるさが無くなり嘘の様に軽くなった。
「これを本当に使いたかったのは、俺じゃ無かったんだろうな…。」
「親父…。」
ポツリと呟かれた切ない声にマルコはそっと持っていた樽ジョッキを白ひげに差し出す。いらん気を使いやがってと彼に心の中でも愚痴るも、カンッと音を立て白ひげはそれに自分のジョッキを軽くぶつけた。